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祖先の跡をたどって:タヒチからハワイへの航海

by カイウラニ・マーフィー

Hokulea
体を電荷が脈打って流れ、頬の涙を拭った。上腕二頭筋と前腕のあいだに閃いた一筋の青い光が目を刺す。マストの索止めを放し、仲間の乗組員と戸惑いの視線を交わす。耳をつんざくような雷鳴が頭上にとどろく。数日前に登ったばかりの堂々たるタフアレヴァ山の頂上に次の稲妻が火を点ける。

ラグーンから出ると、灰色の煙は炎の上に漂う暗雲と見分けがつかなくなる。ホクレア号が停泊したタヒチのタウティラ村の姿が遠ざかる。霞んだ水平線を稲妻が照らし、前方に無数のスコールが待ち受けているのがわかる。横殴りの雨と激しく打ちつける波で何もかもびしょ濡れだ。艤装を突風から守るために帆の開閉を繰り返す。疲れた体は寒さに震え、素手と素足はふやけてしわだらけだ。

あと 30 夜だけ、と何度も自分に言い聞かせるが、それは徐々に疑問にも思えてくる。

【 アオテアロアからオーストラリアまでの 12 日間の航路のほとんどで遭遇した 悪天候と、7.5 メートルの波に耐える乗組員たち。ホクレア号のシドニー港到着により、 このカヌーがはじめて太平洋の外へ出たことが記録された。写真:John Bilderback 】

月のない夜、一等航海士のシャンテルは一晩中進行状況を頭に記録している。そして明け方、ツアモツ諸島まであと約 80 キロメートルだと推測する。浅い環礁が無数に並び、夜のアプローチは危険すぎだ。日が昇ると、毛羽立ったヤシの木のてっぺんが水平線にぼんやりと姿を見せ、ティケハウ環礁の位置を知らせる。そのあとは目的地のヒロまで陸標も基準点もない。

毎夜、月はかすかな三日月から明るい球へと満ちていく。毎年この時期、月はやや南東から昇り、やや南西に沈む。私たちは日の出と日の入りごとに、母なる自然のヒントを綿密に観察する。うねりの方向、風の強さ、雲の形、色、陸の手がかりとなるもの……すべてだ。日中と月のない夜はスウェルを頼りにカヌーを進め、たまに見える星の位置は重要な指標となる。

海上で 12 夜を過ごすと、クプナ(祖先)がピコ・オ・ワケア(赤道)と呼んだ場所にたどり着いたことのサインとなる特別な星が見える。念入りに調整した自分の手を使って、水平線に対するホクパア(北極星)の位置を観測する。星は水平線のすぐ上に瞬き、北に向かって航海をつづけるにつれて徐々に天へと昇っていく。

不安定な激しいスコールや赤道南方のうだるように暑い静寂とは異なり、いまは一定の風が絶え間なく吹いている。数日、そして数週間が過ぎ、ハナイアカマラマ(南十字星)が背後の水平線に低く沈む。南の空に描かれるかすかな弧は見慣れた模様になっていく。子午線を通過する星の観測値により、全 3,860 キロメートルの航路上での推定位置が確認できる。

 

Navigation1【 ハワイの東へと戻る航路をアップウインドで帆走している 場合、ハナイアカマラマ(南十字星)の上部と下部の星のあいだの距離 が、下部の星と水平線のあいだの距離と同じになったとき、 ハワイと同じ緯度にいることがわかります。そこでダウン ウインドに切り替えれば、帆走しやすい方角へと向かう ことができ、やがてその島のひとつを見つけるだろうこと が確信できます。イラスト: Sean Edgerton】

 

Hokupaa【 北半球においてはホクパアも方角を知るための重要な 手がかりです。ナヒク(北斗七星)は航海士がホクパアを 見つけるときの手助けとなり、カヌーが赤道の南に到達 するときの緯度の測定にも役立ちます。イラスト: Sean Edgerton】

 

自分がどこから来たのかわかっているからこそ、自分がいまどこにいるのかがわかる。ホクレア号は島に近いことを察して、波の頭と谷のあいだを勢いよく滑る。沈む太陽に輝く黄金の水平線を見渡しながら、晴れていく雲のなかに陸の端を見つけようと目を見張る。闇が迫る。目に映る前に、私たちは島の存在を感じる。

クプナのイケ(知識)を頼りに、そしてその跡をたどりながら、タヒチからの航路に親しみを抱く。ホクレア号の最初の航法師マウ・ピアイルックに思いを馳せる。きっとサタワル島で耳を澄ませているだろう。

パパ、祖先のやり方を教えてくれてマハロ(ありがとう)。

祖先の記憶を呼び起こしてくれたこの素晴らしい師への感謝の気持ちで、目に涙があふれる。月明かりに照らされた波頭を滑っていくと、かすかなヒロの灯りが遠くに見えてくる。

ただいま。

 

このストーリーの初出はパタゴニアの2017年Summerカタログです。 

 

 

MalamaHonua
2017年秋刊行予定

『Malama Honua: Hokule'a - a Voyage of Hope』(英語版)

持続可能性に対する国際的な認識を高めるというホクレア号の壮大なミッションを記録した美書。寄港地でのホクレアの体験記である本書は、航跡のない航路を導く航法の達人と乗組員の声、そして現代生活における環境的挑戦の数々を乗り越えるために努力を重ねながらホクレア号に心を動かされた科学者、教師、子供を含む地元の先駆者たちの声を織り交ぜている。320ページ、カラー写真入り。ご予約はこちらから

ジェニファー・アレン著、写真ジョン・ビルダーバック

 

ワイメア育ちのカイウラニ・マーフィーは、ホクレア号の 2000 年のタヒチ~ハワイ間の航海で見習い航海士を務めた。現在も素晴らしい指導者から学びつづけ、そして航海への愛をハワイ大学の学生に伝えている。

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