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『新版 社員をサーフィンに行かせよう:パタゴニア経営のすべて』

by イヴォン・シュイナード

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初版の登場から10年を経て、パタゴニアの創業者兼オーナー、イヴォン・シュイナードが2006年に書いた回顧録の傑作の増補改訂版『新版 社員をサーフィンに行かせよう:パタゴニア経営のすべて』が出版されました。約半分に相当する内容を増補し、新たに活動家であり作家のナオミ・クライン氏による序文が追加されています。

新版でシュイナードは、世界的な景気後退と加速する環境危機によって、またパタゴニアにとって未曾有の成功によって特徴付けられた、素晴らしくも厳しい機会と挑戦をもたらした過去10年間に、彼のビジネスと環境への見解がどのように進化したかについて説明します。

下記にて新版からの序文をお読みいただけます。

【 上:表紙:リンコン・ポイントの冬のスウェル。写真:Steve Bissell、書籍写真:Tim Davis 】

知っていても行動しなければ知らないに等しい。
—王陽明

2005年の『社員をサーフィンに行かせよう』(邦訳は2007年、東洋経済新報社)は、もともと、パタゴニア社員に理念を示す手引きとして書いたものだ。こんな地味な本が10カ国語以上に翻訳され、高校や大学、さらには有名企業でも取りあげられることになるとは思ってもいなかった。ハーバード大学でもケーススタディーとして我が社が取りあげられたりした。

パタゴニアは異色な事業のやり方を試す場所だと我々は思ってきた。きっと成功すると思っていたわけではないが、「常識とされている事業のやり方」に興味がなかったのだ。結果、創業から半世紀近く、我々は生き残ってきたし、それどころか栄えてきたと言える。いや、最初の会社、アルピニスト向け事業を展開したシュイナード・イクイップメントの時代から数えれば、その期間はもっと長い。いまは、パタゴニア・ワークスのもとに衣料品のパタゴニアと食品のパタゴニア プロビジョンズを置くという体制になっている。志を同じくするスタートアップ企業への投資もしている。このパタゴニアが、なれるとは思わなかったし、なりたいとも思わなかった大企業になってしまったのは、運命のいたずらとでも言うべきだろうか。

パタゴニアはいまも同族会社であり、仕事を楽しんでいる。大企業になろうとして、大事なことを置き去りにしてきてはいないと思う。今後も、会社の売却や株式の公開は考えていない。そんなことをしたら、「ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」というミッションが実現できなくなってしまうからだ。

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【 クリスマス諸島。写真:Bernie Baker 】

我々の母なる地球の健康状態は、2005年からいままでよかったとは言いがたい。先進国においては、人類の活動によって地球が危険なほど暑くなりつつあるとの認識が広がってきた。論文や書籍、映画、科学者の警告が山のようにあふれ、さらには、軍さえもが「人類の安全を脅かしている最大の要因は地球温暖化である」と言うようになったにもかかわらず、各国政府も企業も、あなたも、そして私も、この流れを逆転させ、問題を解消する道に進むことを拒んでいる。もっと気が沈むような話もある。2007年と2008年にギャラップが行った調査によると、世界全体で38%もの人々が地球温暖化など聞いたこともない、あるいは、地球温暖化についてなにも考えていないというのだ。

自社の環境フットプリントを本気で削減しようと努力する世界的な大企業も現れるようになったが、いまなお、地球の健康状態を示す数値は悪化の一途をたどっている。グローバル・フットプリント・ネットワークの計算によると、きれいな水、きれいな空気、耕せる土地、健全な漁場、安定した気候といった主要なものだけでも、地球が継続的に提供できる量の1.5倍を我々は使っているのだ。パタゴニアが創業した1973年、地球の人口は40億人だった。それがいまは70億人、そして、2053年には90億人に達すると見込まれている。だが、もっと恐ろしい話がある。

人口の増加と並行して、物質的な富が毎年2.5%から3%も増えている。ということは、2050年には、地球の再生能力に対して3倍から5倍もの資源を使う計算になる。これが破産以外の何物でもないことはMBAでなくてもすぐにわかるはずだ。

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【 右が現代の小麦、左が多年生小麦のカーンザ。炭素の固定量が多いのはどちらだろうか。写真:Jim Richardson 】

世界経済は巨大な多国籍企業が牛耳る国々が動かしており、成長と利益が増えつづけることが前提となっている。グリーンな地球、持続可能な地球にしようと努力し、多少なりとも成果があがっても、成長の大きさに比べれば誤差範囲でしかない。成長が巨大にすぎることは、みな、わかっていながら見て見ぬふりをしている。

地球温暖化や持続不可能な資源の消費、富の世界的な不均衡といった問題から導かれるのは、経済および環境の規範を荒々しい方法で修正する未来しかない。歴史をふり返れば、帝国の崩壊は必ずこのような流れとなっている。今回、巨大「帝国」に当たるのはグローバリズムと資本主義であり、その崩壊は極めて深刻な結果をもたらすだろう。

「本書は、一企業を変えようというだけの試みではなく、地球規模で生態系が直面している危機の根源にある消費文化そのものを変えようとしている」
—ナオミ・クライン『新版 社員をサーフィンに行かせよう:パタゴニア経営のすべて』序文より

4分の3半世紀もばかをやってきたあいだに、私は、死んでもおかしくない経験を何度もしてきた。たぶん、そのうち本当に死んでしまうのだろうと思っている。そのこと自体は構わない。そんなものだと思っているからだ。命にも、人間の営みにも、必ず、始まりがあって終わりがあるのだから。

種は進化し、絶滅する。帝国は興り、崩壊する。事業は成長し、つぶれる。例外はない。それはいい。そんなものだ。だが、6度目の大絶滅を目の当たりにするかと思うと心が痛む。たくさんのすばらしい生き物と各地の貴重な文化を我々人類が直接手を下す形で崩壊に追いこむとは……。特に、我々人類の有様を見ると悲しくなる――我々にはみずからの問題を解決する力がないらしいと思ってしまうからだ。

社会に悪が増え、その力が強くなるなか、影響力のある大きな企業となったパタゴニアは、社会に対する責任が大きくなり、責任ある企業となる努力もますます強めなければならないと思う。そのため過去年間にしてきたこと、および、今後しようと考えていることを伝えるのが、この新版を書いた目的である。

 


イヴォン・シュイナードはサーファー、カヤッカー、鷹匠、クライマー、フライフィッシャーマン兼鍛冶屋。パタゴニアのオーナー兼創業者であり『新版 社員をサーフィンに行かせよう:パタゴニア経営のすべて』『シンプル・フライフィッシング:テンカラが教えるテクニック』『レスポンシブル・カンパニー:パタゴニアが40年かけて学んだ企業の責任とは』の著者。イヴォンは妻のマリンダとカリフォルニア州ベンチュラ在住。

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