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公共の土地を公共の手のなかに

by イヴォン・シュイナード

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アメリカの政治家はつねに、政府を「ビジネスのように」運営することに固執してきた。彼らが請け合うのは、官僚制度の無駄をなくし、我々の問題のすべてを自由市場に解決させることだ。

さて、もしアメリカの公有地がビジネスだったなら、株主はその一部の重役たちの著しい怠慢にショックを受けることだろう。

すべてのアメリカ国民が連邦政府の公有地6億4千万エーカーの株を所有している。そして私たちは公務員を雇い、その最大の利益のために、この貴重な資源を管理させる。だが何十年ものあいだ、私たちはこのような非常に大きな所有物を気にかけず、しかもそれが信頼できる手に委ねられていると、たかをくくってきた。

私たちは化石燃料産業を取締役会に入れてしまい、公選した役職者を顎で使うボスになることをガスと鉱業企業に許しているのだ。

【 ユタ州インディアン・クリーク、ヴァン・キャンプ 写真:Andrew Burr 】

公有地の恩恵を最大限活かすかわりに、ユタ州知事ゲイリー・ハーバート、メイン州知事ポール・レページ、アラスカ州上院議員リーサ・(共和党)などを含む右派の政治家の一部は、生態学的に傷つきやすい景観を保護する法律を撤廃しようとしている。ユタ州のベアーズ・イヤーズ国定記念物、北極圏国立野生生物保護区、また私の故郷であるメイン州のカターディン・ウッズ&ウォーターズ国定記念物を含む、非常に特別な野生地のいくつかに与えられた保護を取り下げさせようとしている

彼らはこうしたことすべてを州権という議論で覆い隠しているが、それはいんちきだ。州はすべてのアメリカ国民によって所有されている土地を支配するためのどのような権利を有しているというのだろう。公有地の売却はつねに巨大石油産業の第一の計略でありつづけているが、それは私たち皆によって所有されている貴重な所有物の窃盗である。

公有地はすでに掘削、採掘、放牧、またその他の開発に利用されているのだから、それには合点がいく。だがいくつかの場所は危険に晒されるには、あまりにも特別な場所すぎる。だから両政党は長年、私たちの土地の最善の利用法についての適切な決定を連邦機関に委ねてきた。

土地管理局や国立公園局のような機関は、公有地から幅広い恩恵を引き出すため、科学や経済データだけでなく一般市民からの意見も考慮する。

そして政治家たちがこの監視を取り去ろうとするのはもっての外だ。だが同じように悪なのは、ビジネス志向と言われるこれらの政治家が、単純なバランスシートを読めないことだ。アメリカの公有地が最も効果的に機能するのは、レクリエーションのために保護されているときであり、実際、公有地に多くを頼るアウトドア・レクリエーションのビジネスは610万職を支えている。それは石油、天然ガス、鉱山業の職の合計よりも多い。アメリカ国民が毎年アウトドアのレクリエーションにあてているお金(6兆460億ドル)も、電子機器、薬品、自動車などよりも多い。

一部の人たちは、より多くの土地を石油やガス産業に解放すればその職が増えると主張する。だが現実は、これらの仕事はロボットに置き換えられている。オートメーションにより、数年前に原油価格が下落した際に職を失った人たちの1/3から半数が、未だに新たな仕事を見つけられていない――価格も生産もふたたび急上昇したにもかかわらずだ。そしてそうした石油やガス産業の仕事の大部分は再生エネルギーなどの新たな産業に移行してしまった。(信じられるかい?)

だが、国立公園付近の道路脇にあるホテルで働く人たちの職を外部委託することはできない。アメリカの遠隔地にある野生地への入り口となる数多くの町のリバーガイドの仕事を自動化することもできない。公有地は持続可能な国産の経済の動力なのだ。2008年から2011年の景気後退の際も、アウトドア産業は毎年5%成長していた。

最近の研究によると、西部の保護地区のある地域は、ない地域に比べて、一貫して雇用率がより高く、所得の伸びもある。ユタ州のグランド・ステアケース・エスカランテが国定公園に指定されてから22年のあいだ、近接する2つの郡の雇用は38%上昇した。

立法者たちが選挙で選ばれたのは、公有地の所有者の利害という目的を果たすためであるにもかかわらず、その一部はその利害とはかけはなれた行動をしている。ビジネス界であれば、私たちは即座に彼らを首にするだろう。もちろん、私たちの政府は実際はそのように正しく機能しない。

西部住民の約91%が国立公園、国有林、野生生物保護区、あるいはその他の連邦政府の土地はその州の経済の繁栄にとって必須であることに同意しているにもかかわらず、公有地の保護を支持するアメリカ国民はひどくバラバラだ。狩猟者と釣り人は公有地を愛し尊重しているが、「釣り針と銃弾」層は環境保護主義者とビジネス人口の一部を怖がらせる。環境保護主義者も公有地を愛し尊重しているが、ハードコアな活動家は、大多数のビジネス人口と一部の狩猟者/釣り人を怖がらせる。そしてビジネス人口も公有地を愛し尊重しているが、企業が擁護に関与することについては多くの人が懐疑心を抱く。

私たちに必要なのは、一致団結して公有地を保護するよう取り組むことだ。私たちは皆、私たちの空気も水も野生生物も公害や開発の心配のない、野生地の利用を大変貴重なものと考えている。私たちは皆、私たちの土地の保護によって生じる膨大な経済から恩恵を受けている。そして私たちは皆、私たちの経済だけでなく、私たちのアメリカの遺産を脅かす賢いビジネスマンを装った詐欺師に食い物にされるのが嫌いだ。

不和を止めて、株主のように振る舞い、選挙で選ばれた代表たちが私たちが受けるべき価値を履行するよう要求しようではないか。

 この記事の初出は『ロサンゼルス・タイムス』誌です。

 

Defend【 国定記念物に新たに指定されたベアーズ・イヤーズのコーム・リッジの上に沸き立つ積乱雲。ユタ州サンファン郡。写真:JOSH EWING 】

 

ベアーズ・イヤーズの意味は人によって異なります。多くのアメリカ国民にとっては無名のこの景観は、アメリカ先住民の神聖なる故郷であり、世界級のクライミング・エリアであり、アウトドア派が驚嘆する場所であり、そして考古学者にとっては憧れの地です。しかしそこはまた、公有地を私有化して開発することを望む、選出議員のターゲットでもあります。脅威に晒すにはあまりにも特別なこれらの場所を私たちが守ることは絶対に必要です。ベアーズ・イヤーズは間違いなくそういった場所のひとつです。

探検して、行動を起こそう

 

イヴォン・シュイナードはサーファー、カヤッカー、クライマー、フライフィッシャー、鷹匠、そして鍛冶屋。パタゴニア社のオーナーであり、『Let My People Go Surfing: The Education of a Reluctant Businessman』(日本語版2017年春夏発刊予定)、『シンプル・フライフィッシング:テンカラが教えるテクニック』、『レスポンシブル・カンパニー:パタゴニアが40年かけて学んだ企業の責任とは』の著者。妻のマリンダと、カリフォルニア州ベンチュラ在住。

 


 

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コメント

極東の、島国の、桜がまだ開花していない地域から、頂いたメールを読んで、太平洋を眺めながら感じた、強い違和感を記しておこう、と存じ上げます。

オバマ前政権時代の化石燃料業者はビジネスという動機で乱開発していた事には同意します。

しかし、今年のアメリカの主な出来事として、

①『MAKE AMERICA GREAT AGAIN』を掲げるトランプ政権が誕生したこと
②就任早々パイプラインの開発停止の解除をしたこと
③WTI先物のトレーダー達の予想を大きく裏切るEIAの原油在庫増加
④石油採掘装置の稼働数が去年の今ごろから増加を継続していること
⑤三月に入り急にFOMCのメンバーが金利の引き上げキャンペーンを打ち上げ、政策金利を引き上げたこと

以上の出来事を鑑みると、今の化石燃料業者の動機は、ビジネスの枠組みでは捉えきれないもっと巨大な動機が発生していると勘ぐっています。

この先、10~20年先の世界の基軸通貨『USドル』の将来・・・(続く)

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