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カスケードのリズム

by コリン・ワイズマン

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「ただ地元にとどまってウインドリップに乗りたいだけなんだ」とジョシュ・ダークセンは言った。それはシンプルな主張であり、シンプルな目標だった。

2014 年 4 月、僕たちはオレゴン中央部のサウス・シスターで数日間キャンプしていた。キャンプ地となる山の中腹にたどり着くのには時間がかかったが、神経がすり減るような場面はなかった。ハイウェイ372 号線から整備された雪道を、スノーモービルではなくファットバイクで 16 キロ進むという目新しい手段を使ってアプローチし、そこからスプリットボードでハイクアップした。そして南側の山腹にある春の深い雪塊を掘ってベースキャンプを設営した。

豪雨でできた深い溝を避け、周辺を探索しながら 3 夜を過ごした。ダークセンはシーズンのはじめに見た積雪層との変化に注目していた。僕たちが滑ったのはほんの一部だけだったが、滑降に適した峡谷をいくつか見つけた。

【 自分の裏庭にマウント・マクラフリンのような予期せぬ秘宝が隠されているのなら、冬中オレゴンにとどまるのはちっとも悪くない。写真:TYLER ROEMER 】

オレゴン州クレスウェル近郊で育ち、現在はベンドに住むダークセンにとって、これは新たなはじまりだった。10 代のころからスノーボーダーとして活躍し、毎年冬になるとプロが好む世界各地の有名な山へと移動するのが恒例となった。旅は冒険と前進、そしてその成果を意味するもので、一方故郷は緊張が和らぐ場所だった。そしていま40 歳を前に、妻と幼い子供をもつダークセンは少しペースを落としたいと感じていた。

「スノーボーダーを職業にすると決意するやいなや、信じられない数の遠征をするようになった。地元のオレゴンからはいつも逃げ出していた。でも帰ってくると必ずウインドリップに乗り、他にはない感覚を味わった。自己最高のライディングという感じだった」

Blowing【 爆走中。オレゴンのマウント・ベイリーの火山性の地形が、ダークセンのウィンドリップ探求の舞台となった。写真:TYLER ROEMER 】

この 20 年間、 毎年 6 か月以上を遠征に費やしてきたダークセンは、2015〜2016 年の冬、オレゴンだけで過ごすことに決めた。大胆な試みだったが、幸いその年の太平洋岸北西部は大雪に恵まれ、またそこにはダークセンが深く執着する「ウインドリップ」という存在もあった。ウインドリップは雪が波のようになる形状で、一方向から吹きつける風に形成され、たいていは峡谷やボウルの端にある。オレゴン中央部は火山性の地形と高原の風が豊富な、ウインドリップを作り出す場所で、つまりダークセンはそれを追うための絶好の環境に生まれたのだ。

「僕のスノーボードはいつもオレゴンに影響されている。コンクリートのスケートパーク、冷たい海の波、マウント・バチェラーの自然の地形のどれもが、僕のスタイルに反映されている。スピードを出すメリットをスケートパークで学び、波に乗るサーフィンからリズムと流れを学び、マウント・バチェラーでスノーボードをしながら 3 つのスポーツ全部を組み合わせる可能性を学んだ。ウインドリップはスピードの追求という点でスケートパークととてもよく似ている。たんにドロップインして重力にまかせるだけじゃない。流れるような状態を見つけるんだ」

ダークセンはその冬、スプリットボードを使って新たなウインドリップを探すことに専念した。これは口で言うほどたやすいことではない。海の波と同じように、ウインドリップは局地的な気象パターンによってつねに変化するからだ。

「ウインドリップはずっとつづくわけじゃない。行ってみたら何もないという日もあれば、夢のように巨大で完璧なウインドリップに出会い、すごく面白いライディングを楽しめる日もある。ウインドリップは強風をともなう雪嵐のあいだに形成されて、太陽が出ると消える。つまりウインドリップの栄光の瞬間は嵐の直後だ」

ウインドリップを追いかける方法はいたってシンプルだが、根性と忍耐力を要する。吹雪が止まないうちに山に向かい、キャンプを設営し、翌朝の好天と一転した景色を期待する。

Josh【 大衆とは異なる視点でターンを刻むジョシュ・ダークセン。写真:TYLER ROEMER 】

「ウインドリップのラインは見た目が本当にきれいで、乗るのは最高に楽しい。今年はほんのはじまりに過ぎず、これから生涯をかけて地元の山を開拓していくのが新しい目標。どんどん面白くなっていくだろうな」

往々にして、世界各地を旅することが視野を広げる唯一の方法であるかのように言われるが、ダークセンは地元にとどまることによって、その山々を新たな方法で体験することができた。

「いいスノーボードには遠征が必要だという考えは、健康を維持するためにはペットボトル入りの水を買う必要があると、コカコーラ社が消費者を説得するのに似ている。水を買わせようとする絶え間ない宣伝のせ
いで、水道の蛇口から水が出てくることを忘れてしまう。この冬、僕は家から 2 時間以上離れたところには行っていない」

彼の試みは、現代のスノーボード関連のメディアで取り上げられる冒険とは明らかに異なる。アイスアックスやクランポンやロープ、あるいは午前 3 時のアルパインスタートなど、遠征を思わせるものはほとんど要らない。多くの資金やギアを必要とせず、バックカントリーの知識と探究心があれば誰でも挑戦でき、天候と雪崩に適切な注意を払って地形を選択すれば、バックカントリーでの予測可能な危険性を超えた滑降が可能になる。そしてスノーボーダーは、起伏に富む火山性の地形を読み取るというパズルに集中しながら、刺激的で面白いスノーボードと心地よい冒険感覚を味わうのだ。

「スノーボード界はとても極端になった。着地に失敗すれば大腿骨が真二つに折れるようなジャンプをし、雪崩の可能性が高いラインにドロップインすることもある。この数年間に家族のことをじっくり考え、危険を追い求めるのはもういいやと思った」

Sometimes【 ときとして、変革に必要な唯一のものは、良い方向転換。オレゴン州マウント・ベイリー。写真:TYLER ROEMER 】

その冬ダークセンと仲間たちは、南のマウント・マクラフリンの溶岩丘から北の象徴的な山マウント・フッドまで、オレゴンの 10 峰を探検してシーズンを終えた。目的はライディングだったが、それぞれの構想と特有の地形を追求することにより、報酬はさらに大きなものとなった。彼らは誰もいない、そして見渡すかぎりウインドリップがつづく火山の景観を見つけた。ダークセンの裏庭で、新鮮なカスケードのリズムを見つけたのだ。

コリン・ワイズマンはワシントン州ベリンガムを拠点とするアウトドア写真家、ライター、エディター。

このストーリーの初出はパタゴニアの2017年Mountainカタログです。本カタログはパタゴニア直営店で無料配布中。こちらからご請求もいただけます。

 

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