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「その熱意、きちんと伝わっていますか?」:第5回草の根活動家のためのツール会議

中西 悦子  /  2017年1月26日  /  読み終えるまで9分  /  アクティビズム

11月25日(金)未来の世代のために空気、水、そして土を守ろうとする日本の草の根環境保護団体の皆さんと。写真:パタゴニア日本支社

1994年の第1回目の「草の根活動家のためのツール会議」は、パタゴニアが環境保護団体にたんに資金提供する以上の支援を行いたい、またパタゴニアのもつ資産を緊急な環境問題の解決のために活用したいという願望からスタートしました。以来アメリカで、さらに2008年からは日本でも2年ごとに開催しつづけ、これまでに1,000人以上がこの会議に参加してきました。

日本の環境保護団体が直面している財政基盤、市民の意識、法律、メディアなどの状況はアメリカとは異なりますが、その状況に対応する適切なツールが必要なことは同じです。効率よく行動するには、効果的な戦略を構築し、メッセージを明確化し、そのメッセージが伝わるため有効な手段を見つける必要があります。

第5回となる2016年11月、54年ぶりの雪に覆われた山梨県清里高原キープ協会清泉寮に、未来の世代のために空気や水や土を守ろうと全国各地のローカルコミュニティで活動する草の根環境保護団体の皆さんが集まりました。不安、緊張、期待、半信半疑等、さまざまな気持ちを抱えながらも、大切な3泊4日という時間をパタゴニアに預けて、自分たちの取り組む問題の解決や新たな世界を作ることを少しでも前に進めたいという思いでした。

今回の会議で軸としたテーマのひとつは、「伝える」と「伝わる」は違うということ。市民活動のあちこちで見受けられるのが、たくさんの情報を絞りきることができず、また正しい情報を伝えようとするあまり、そのままの状態で提供してしまい、結果的に一方通行となって届いておらず、つまりは「伝わらない」という悲しい現状です。多くの場合、最初の入口でつまずいてしまっているのです。

基調講演では、「その熱意、きちんと伝わっていますか?「伝える」から「伝わる」コミュニケーションへ」という内容で、砥川直大氏から論理的にまた視覚的に「伝わる」ということをていねいに掘り下げていただきました。砥川氏は広告代理店でCM制作や企業のコミュニケーション戦略に携わり、そうした仕事で培ってきた「伝える」ための技術を社会に還元したいとして、市民活動のサポートもされています。

「言いたいことだけ言っていませんか。100%自分たちと同じ考えにさせないとダメだと思っていませんか。憤りにまかせて言っていませんか」

なかでも、伝えるのはひとりでもできる、伝わるのは相手がいなくてはできない、そして自分の言いたいことと相手の興味のあること、この重なった部分だけが伝わること、という話には、当たり前のようにして思い込みに気づかされたという参加者。さらに、技術の進化による情報の洪水のせいで人間の情報能力が上がり、無視する力(スルースキル)が増している現在、ほとんどのことは伝わないという現実も告げられました。そうした状況のなかで、問題を簡単にすること、要約して可視化すること、受け取れる状態にすることの重要性、また伝え方ひとつで伝わり方も結果もまったく違うことになるので、自分たちが変化することで可能性が広がることを、4日間の導入として話していただきました。

「その熱意、きちんと伝わっていますか?」:第5回草の根活動家のためのツール会議

基調講演者の砥川直大氏 『その熱意、きちんと伝わっていますか?「伝える」から「伝わる」コミュニケーションへ』 写真:パタゴニア日本支社

「その熱意、きちんと伝わっていますか?」:第5回草の根活動家のためのツール会議

川嶋直氏考案のえんたくんミーティングで、ふと浮かんだ疑問や発見を共有して、基調講演の理解と参加者同士の理解を深める。写真:パタゴニア日本支社

そしてもうひとつの軸には、目標を定めて実効性のあるキャンペーン(人を動かして社会をつくる・変えるプロジェクト)を作り上げ、そのための思考過程を助けるツールを持ち帰ってもらうことがありました。2日目からのワークショップは、各講師からの角度を変えた問いかけにより、すべての基礎/土台となる自分たちの活動についてもう一度見つめ直してもらう時間です。活動をしていくなかでは、それがときとして対処療法になってしまい、働きかける必要のない対象に多くの時間をかけていることがあります。相手に合わせるだけではない自分たちの取り組みができるのは、自分たちのミッションや目標が明確で、さらに戦略があるからこそ。戦略により仲間をつくることもでき、どれに力をかけ、どれをしないのかの判断もできます。

「人を巻き込む人の責任としての青写真。やることリストではなく、何をやった結果こういう未来をつくっていたいか。皆さんでないと見通せない未来を見せてください」

ワークショップでは、現状と問題はもちろん、とくに未来像と目標を明確化することに焦点が当てられました。そしてステークホルダーを洗い出して、戦略と戦術を立てるのですが、皆さん思いのほか苦戦。自分たちの団体のミッションと目標設定、またそれを端的に伝えられる状態にすることに多くの時間が割かれました。

「その熱意、きちんと伝わっていますか?」:第5回草の根活動家のためのツール会議

『その目標はほんとうに目標なのか?』 未来像と目標、現状と問題を区分して書き出し、率直なフィードバックをその場でもらう。写真:パタゴニア日本支社

「その熱意、きちんと伝わっていますか?」:第5回草の根活動家のためのツール会議

問題の解決をひとつの団体だけでするのは困難な時代、活動に関わるステークホルダーを洗い出してみる。写真:パタゴニア日本支社

パタゴニアが直接できることは限られています。だからこそ、近くの川や森や海といった環境を守りたい、自然のままの美しさ、小さな生き物たち、生命を守りたいという思いをもつ人たちに敬意と共感を抱き、たとえ不十分でも行動しはじめた人たち、粘り強く行動する人たちにツール会議のような場を提供し、彼らの目的を実現するためのツールを共有します。行動する人たちは、ともに解決する、ともにつくるパートナーなのです。

「草の根というのは根をはって何があってもはがれない強固なネットワークをひろげていくという発想であって、ちんまりこじんまりやっていくことではありません。皆さんは世界を変えるアクティビストなんだと思って、パタゴニアは一所懸命支援しています。皆さんにかける期待はやたらと大きいのです」

と講師のひとりが言いました。そしてさらに、「私たち講師陣も同じ気持ちです」と。 周囲を見渡してみると、日本をなんとなく覆う閉塞感。そして個々の興味関心はクラスタ化し、互いの枠を越えて関係性を構築することは容易ではなく、全体として無関心にも見えてしまいます。けれども一方で、震災以降、社会を良くしていこうとする気運の高まりはこれまでになく高く、働く世代や若い世代ほど価値基準に変化が起きています。

「その熱意、きちんと伝わっていますか?」:第5回草の根活動家のためのツール会議

3日目の朝、前日の一連のワークショップの意図の振り返りと同時に、人を巻き込んでいく責任について問いかけられ、さらにスイッチの入る参加者の皆さん。写真:パタゴニア日本支社

「その熱意、きちんと伝わっていますか?」:第5回草の根活動家のためのツール会議

強化合宿のような踏ん張りが続いた4日間の最後、戻って取り組むことが共有されて、互いに見守っていく大きな繋がりを感じる時間。写真:パタゴニア日本支社

連日のワークショップに熱心に取り組み、最終日前夜には講師とともに夜中3時まで語った参加者もいました。皆さん頭は目一杯疲れているはずなのに、心と身体はとても穏やかでエネルギーが満ちていると言い、参加者として会議に参加した10年ほど勤めるパタゴニアの社員も10年という社歴のなかで3本の指に入る経験だと言っていました。ただし、会議の真価はこれからです。ある環境団体からは、メンバーで集まって頭を並べ、目標を組み立てなおすことに取り組んでいる写真が送られてきました。

「公正な社会では最良の情報を得るものが勝つ。しかし、私たちは公正な社会を相手にしているわけではない。私たちは、敵が戦いに使うツールと同じツールを使って戦う必要がある。そしてもっと賢く、もっと巧妙にやらなければならない。成功した革命はすべて、上からではなく、下からはじまったという事実を忘れてはいけない」
-イヴォン・シュイナード(パタゴニア創業者/オーナー)

Tools For Grassroots Activists・An Environmental Activist’s Handbook (1995)より引用

2016年ツール会議参加者:

草島進一 (最上小国川の清流を守る会)
高桑順一 (最上小国川の清流を守る会)
ヤブキレン (NGO Life Investigation Agency (LIA))
宮城了大(一般社団法人石巻海さくら)
高橋正祥 (一般社団法人石巻海さくら)
鈴木郁子 (STOP八ッ場・市民ネット)
清水裕子 (STOP八ッ場・市民ネット)
下向辰法 (たまあじさいの会)
古澤省吾 (たまあじさいの会)
坂本典子 (ジャパン・フォー・サステナビリティ)
丹下遙 (水海山の緑と水を守る会)
田口幹 (水海山の緑と水を守る会)
丸山幸子 (NGO F.C Manis マニスファンクラブ)
長谷川直子 (NGO F.C Manis マニスファンクラブ)
秋元浩治 (NPO法人全国有機農業推進協議会)
岡田ゆり(NPO法人全国有機農業推進協議会)
辻村千尋 (公益財団法人日本自然保護協会)
星美紀 (認定NPO法人ホタルのふるさと瀬上沢基金)
田嶌泰行 (認定NPO法人ホタルのふるさと瀬上沢基金)
岡田隆 (武庫川の治水を考える連絡協議会)
久保田雄大 (大鹿の100年先を育む会)
山根沙姫 (大鹿の100年先を育む会/赤石山河の会)
桃井貴子 (NPO法人気候ネットワーク)
桑田博規 (NPO法人気候ネットワーク)
塩崎健太 (NPO法人川塾)
溝延和也 (NPO法人川塾)
高島美登里 (上関の自然を守る会)
嶋田淑子 (上関の自然を守る会)
黒田太士 (えひめ風車NET)
森本英章 (えひめ風車NET)
竹之下惟基 (木津川流域のダムを考えるネットワーク)
森田由一 (木津川流域のダムを考えるネットワーク/一般社団法人 伊賀未来こども・自治研究会)
坂田昌子 (国連生物多様性の10 年市民ネットワーク)
萩岡真美 (国連生物多様性の10 年市民ネットワーク)
近澤佐恵子 (NPO法人西表島エコツーリズム協会)
溝越えりか (ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング)
林洋平 (グーグル株式会社)
上原健 (グーグル株式会社)

2016年ツール会議講師:

砥川直大 (ADK クリエイティブ・ディレクター/CMプランナー)
川嶋直 (公益社団法人日本環境教育フォーラム理事長)
坂本文武 (大正大学地域創生学部准教授/MedicalStudio代表理事)
広石拓司 (株式会社エンパブリック代表)
佐藤潤一 (パタゴニア日本支社/環境・社会部門ディレクター)
中野宗 (株式会社アークウェブ代表取締役)
松岡朝美 (グーグル株式会社/Google Earth Outreach プログラムマネージャー)

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