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『Let My People Go Surfing』

by イヴォン・シュイナード

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今年はパタゴニアの創業者イヴォン・シュイナード著『Let My People Go Surfing: The Education of a Reluctant Businessman』が刊行10周年を迎え、4割以上の新たな内容と、ベストセラー本『これがすべてを変える』の著者ナオミ・クラインによる新たな前書きを加えた完全改訂版(英語版)がペンギン・ブックスから出版されました。日本語版も2017年春発売予定です。

この改訂版でシュイナードが語るのは、世界中で景気の後退と悪化が進む、環境危機を特徴とした過去10年において、ビジネスおよび環境への彼の視点がどう進化したか、また彼の会社の前例のない成功について、そしてその途上でパタゴニアが直面してきた困難な課題と偉大な好機についてです。下記にて第2版からの序文をお読みいただけます。

【 上:表紙:リンコン・ポイントの冬のスウェル。写真:Steve Bissell、英語版書籍写真:Tim Davis 】

知っていても、行わなければ、知らないのと同じである。
—王陽明

2005年に『Let My People Go Surfing』を執筆したとき、私が意図していたのは、社員のための哲学本となるものだった。当時はこのシンプルな本が10か国語に翻訳され、高校や大学で、さらには影響力のある大企業で使われるとは予想だにしていなかった。ハーバード大学ですら、我々の会社の事例研究をしたほどだ。私たちはつねにパタゴニアを型破りな方法でビジネスを営む実験と見なしてきた。それが成功すると確信していた者はいなかったが、誰も「従来型のビジネス」を営むことには興味をもっていなかった。私たちは50年近く生き残り、繁栄すらした。アルピニストのためのギアを作ったシュイナード・イクイップメントを含めればそれ以上……。いまはパタゴニア・ワークスが社名となり、衣類会社のパタゴニア、食品会社のパタゴニア プロビジョンズはその傘下にある。私たちはまた志を同じくする新興企業のいくつかにも投資してきた。皮肉なことにパタゴニアは、私たちが夢に描くことも欲することもしなかった、大企業となった。

パタゴニアはいまだに家族経営の会社であり、仕事を楽しんでいる。そしてこのような大企業となるために私たちの価値観を妥協しなければならなかった、とは感じていない。私たちはお金のために理念を曲げることも、株式を公開するつもりもない。それは「ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」というパタゴニアのミッションに妥協をもたらす。

Christmas【 クリスマス諸島。写真:Bernie Baker 】

2005年以来、私たちの故郷である惑星の健康は良好ではない。先進国の一般市民はこの惑星が人間の活動によってますます、危険なまでに暑くなっていることに気づいている。しかし豊富な記事、書籍、映画、科学者の警告、さらには軍隊までもが、人類の安全にとって唯一最大の脅威は地球温暖化であると言っているにもかかわらず、政府、企業、そして私たち自身も、この問題を覆すための意義ある手段を取ることを拒否しつづけている。さらに悲惨なことに、ギャラップの2007年と2008年の世論調査によると、世界中の人口の38%もが、地球温暖化について聞いたこともなければ意見ももたないことを示している

世界の最大企業の数社が自社の環境フットプリントを削減すべく多大な努力をしているにもかかわらず、惑星のあらゆる健康の指標はすべて悪い方向に向かいつづけている。〈グローバル・フットプリント・ネットワーク〉の計算によれば、私たちは現在、きれいな水、きれいな空気、耕作地、健康な漁場、安定した気候といった、惑星が補充し得る必須の「サービス」の許容量を150%超えている。1973年にパタゴニアが創業したとき、地球の人口は40億人だった。現在では70億を超え、2053年には90億に到達すると予想されている。しかしそれは最も恐怖を感じる数字ではない。

同時に、その人口の豊かさは1年に2.5〜3%増している。2050年時点で私たちは地球の再生能力を300〜500%超えたところにいるだろう。それが破産であることを知るのに経営学修士号は不要だ。

Wheat【 近代の小麦は右、カーンザ多年生小麦は左。どちらがより多くの炭素を隔離するか想像できるだろう。写真:Jim Richardson 】

巨大な多国籍企業によって支配されている政府が運営する世界経済は、増えつづける成長と利益に依存する。よりグリーンで持続可能な惑星へ向けての私たちの進歩は、この成長によって帳消しされて余りある。成長は誰もが口にしたくない部屋の中の巨大なゾウだ。

地球温暖化のさまざまな問題を抱えるなか、資源利用の持続不可能性と世界中の富の不均衡は、経済と環境モデルにとって破壊的な反発のための完璧なシナリオとなっている。そして、歴史的に見て帝国の崩壊はこれまでずっと同じシナリオをたどっている。世界主義と資本主義をひとつの巨大な「帝国」と考えるとき、その結果は深淵だ。

「これはただ一企業を変えようとする以上の試みの物語です。それは地球の生態系危機の中心である消費文化を変える試みです」
—ナオミ・クライン『Let My People Go Surfing』前書きより

愚かで風変わりな行為をしてきた75年のあいだ、十分な臨死体験をしてきた私はいずれ死ぬという事実を受け入れている。そしてそれにあまり惑わされてもいない。すべての命には始まりと終わりがあり、それはすべての人間の企ても同じだ。

種は進化し、絶滅する。帝国は繁栄し、崩壊する。企業は成長し、倒産する。例外はない。私はそれらすべてを受け入れている。しかし第六の大滅亡期を目撃するのは辛い。あまりにも多くの素晴らしい生物とかけがえのない土着文化の完璧な崩壊に、人間が直接的な責任を抱く滅亡。人間の種の窮地を目撃するのはとくに悲しい。私たちには自分たちの問題を解決する能力が欠如しているようだ。

社会の悪がさらに強力かつ増大していくにつれて、より巨大で影響力をもつ一企業として私たちが社会に負う責任、そしてより責任ある会社になる努力も、また増している。この本の改訂版の意図は過去10年で私たちがやったこと、目標を達成するために次の10年に何を計画しているかについて読者と分かち合うことだ。

 

 

 

 

『Let My People Go Surfing(普通でない会社経営のさらなる10年)』日本語版は2017年春発売予定です。

 

イヴォン・シュイナードはサーファー、カヤッカー、鷹匠、クライマー、フライフィッシャーマン兼鍛冶屋。パタゴニアのオーナーであり『Let My People Go Surfing: The Education of a Reluctant Businessman』、『シンプル・フライフィッシング:テンカラが教えるテクニック』、『レスポンシブル・カンパニー:パタゴニアが40年かけて学んだ企業の責任とは』の著者。イヴォンは妻のマリンダとカリフォルニア州ベンチュラ在住。

 

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