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『未開の領域』のツアー

by ステフェン・ジョーンズ

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制作パタゴニア プロビジョンズ、監督クリス・マロイ(『180 South』)による最新の短編映画『未開の領域』をご紹介します。これは私たちの土地、水、野生動物を修復可能にする方法で育てられ、収穫され、製造された食物が、環境危機の解決策の一部になれること、そしてなるべきであるという私たちの信条から生まれた映画です。

映画をご紹介するのはワシントン州立大学の〈ブレッド・ラボ〉のディレクター、ステフェン・ジョーンズで、『未開の領域』の登場人物のひとりでもあります。導入文につづいて映画のトレーラーをご覧いただけます。

Art work : Peter McBride



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パタゴニア・ソーホー店で熱心に聞き入る聴衆。写真:Zach Mason

 

僕らの近くにいたバージットと200人の参加者に聞こえないように、モニカが僕の耳元で囁いた。「トイレにウィスキーのボトルがあるわよ。ハドソン・ダブル・チャードの……」だがちくしょう、バージットとサラには聞こえたようだ。彼女たちは「そう、そう」と笑ってくれはしたが。トイレに隠されたボトルについて聞いたのは久々で、パタゴニアの直営店でははじめてのこと。確かにそれについては噂を耳にしていた。(僕の兄の結婚式での話だが、そう僕の兄のね。)僕はモニカに(いやボトルにか?)くっついて全国をまわりたい気分になった。ニューヨーク、ポートランド、シアトル、サンフランシスコ、ラ・コナー。えっ、ラ・コナー? ああ、ラ・コナーにも行くんだ。そして上映もある。だから映画も見れる。

問題はソーホー店にはトイレが2つある。そして僕は間違ったほうに入っていた。『未開の領域』ははじまろうとしていて、僕は間違ったトイレにいた。ニューヨークの上映会の悪い幕切れだ。ルミ・アイランドからブレイン・ウェッツェルも来ていて、彼の樺の木皮茶を出す準備を整っていた。サーフィンやそれ以外のことにおいても僕らのヒーロであるクリス・マロイは飛行機に乗り遅れ、聞いたこともない町の酷い空港で立ち往生していた。僕はといえば間違ったトイレで、あとで隣のトイレにあるとわかったウィスキーを探していた。

モニカにメッセージを送る。「違うトイレよ、カウボーイ」というのが返事だった。了解。やっとわかった。僕は本当にトイレを必要としていた13人の憤る人たちに「おっと、トイレを間違えた」と言った。誰も笑わず、僕が何を言ったかも分かっていないようだった。手強い聴衆だ。「すまない、僕はラ・コナー出身だから。いや本当はラ・コナーの近くのベイビューってところだけど。ニューヨークは大都会だね!」すると映画がはじまった。上映開始だ。

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ヘルス・フォー・ユース〉の共同創始者兼代表のヘザー・バッツ。パタゴニア・ソーホー店のイベントで得たすべての寄付金がこの団体に献金された。写真:Zach Mason

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参加者はパタゴニア プロビジョンズの食材で作られた軽食を楽しんだ。写真:Zach Mason

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パタゴニア・ソーホー店での上映後の質疑応答。映画に登場した〈ランド・インスティテュート〉のスコット・アレグルッチ、新製品のベニザケの産地ルミ・アイランドのウィロウズ・インの料理長ブレイン・ウェッツェル、この投稿の著者で〈ブレッド・ラボ〉のディレクター、ステフェン・ジョーンズ、パタゴニア プロビジョンズのディレクター、バージット・キャメロン。写真:Zach Mason

『未開の領域』は短い4つ章から成る構成だが、最後の2つは僕の出身地の太平洋北西部の人たちについて。イヴォンが映画で農夫、学生、科学者、漁業者について述べているように、革命は下からはじまる。「僕ら」、「僕ら」全員、少なくとも気遣う「僕ら」全員によって。太平洋北西部の最北の地を、いろんな街のスクリーンで見て、つねに一杯だったその聴衆を眺めると、こう思うようになった。各々の新たな上映場所で、その「僕ら」が誰なのかが定義されていると。たんに色々な添加物の入っていない食品や、あるいは簡単に手に入って、誰にでも買うことができる商品を欲する僕ら。僕らが本物の食品を食べることができるよう十分な賃金を払うことが良い考えだと思うどこかの誰か。食品のはじまりとなる本物の農家と漁業者と牧畜者。こういったある一定の気遣いを僕らに示してくれている誰か。

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映画上映ツアーにおける最も特別な上映会のひとつは、ワシントン州ラ・コナーのヘドリン・ファームの納屋で行われた。映画に登場した〈ルミ・アイランド・リーフネッター〉と〈ブレッド・ラボ〉の育種家の仕事を讃える、小さな地元のイベントだった。写真:Kim Binczewski

ニューヨークは最初の一歩だった。僕にとって最後の「未開の領域の超素敵な世界ツアー2000(編集者記:公式名ではありません)」の上映会はサンフランシスコだった。(僕をハワイに送ることはしてくれなかったから……)。モニカ、サラ、その他の社員は映画を店内ではなく、壁で上映することにした。巨大な壁だ。しかも屋外で。サンフランシスコ・アート・インスティテュートの屋上だ。満月の寒い(おいおい、まだ7月だぞ)サンフランシスコの夜だった。〈ザ・ミル〉のジョージー・ベーカーも出席した。何百人もの聴衆のなか、ショーツ姿で現れたのは彼だけで(ズボンを履けよ!)、彼のハンド・ブレッドを食べさせてくれた。そしてフリーダ・カーロもそこにいたかも知れないな。1930年代初期、彼女は夫とそこでたむろしていたらしい。彼女は多分、壁にもたれながら煙草を吸っていただろう。


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サンフランシスコ湾に日が沈むと、仲間たちは『未開の領域』の上映会のため、アート・インスティテュートの屋上に集まった。写真:Amy Kumler

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焼きたてのパンとパタゴニア プロビジョンズのブラック・ビーン・スープ・ミックスで作ったブラック・ビーン・スライダーに列を作る聴衆。写真:Amy Kumler

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パタゴニア プロビジョンズのスタッフ。写真:Amy Kumler

そしてこれほどの屋外はないというサンフランシスコで、9メートルx 15メートルの壁には鳥が(!!!)、魚が、小麦と蕎と大麦が、そして知っている人たちだと感じることのできる場所が映された。それまでにこの映画は33回見ていたが(もちろんちゃんと数えている)、僕はクリスティーとキースのチマカムの蕎畑からふたたびガチョウが飛び立つのを待ち、いちばん良く知っている人たちと場所を眺めた。デーブ・ヘドリンがラ・コナーの納屋の前で彼のオンボロのピックアップ(悲しくも以後オシャカ行きとなった)の前座席に陣取り、コンバインに乗って豆をもつバージット、毎日そうするようにラボから温室へと行くベサニー、ただ何となくそこに立っているコリン(何か考えている? もしかしたらね。でも何についてだろう?昼飯かな?たぶん)、いつものように寒い日にルミに浮かぶボート……。そして僕はまるでその夜はじめて彼らとこうした場所を見たかのごとく眺めていた。他の数百人と一緒に。彼らのほとんどが映画の登場人物に会ったことも、これらの場所に行ったことも、農耕の埃を感じたり味わったり、毎日そこに存在するある種の涼しい風を感じたこともない人たちだ。だがその夜、彼らは体験した。街中で。……そしてフリダもそこにいたに違いない。

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サンフランシスコに満月が昇るなか、聴衆に挨拶する映画監督クリス・マロイ。写真:Amy Kumler

もし僕らが心を開く準備ができているならば、希望には柔軟だが強力な美がある。クリス・マロイはこの映画で僕らをそっとそこへ連れていってくれる。僕らは皆、食品のシステムが崩壊していることを知っている。だがいまこの瞬間、その目的地を必要としている。美しいどこか。自分を超えた何かに気遣う誰かがいるどこか。そして彼らは僕ら全員に手を差し伸べている。手を振り、口角に泡を飛ばして叫ぶことなく僕らを希望という場所へ連れていってくれる。

トレーラーを見る。

 

 

私たちが生産する食品とその調達についてはpatagonia.jp/provisionsをご覧ください。


Stephen

ステフェン・ジョーンズ

ステフェン・ジョーンズのインスタグラムウェブサイト

ステフェン・ジョーンズは小麦の育種家で、マウント・バーノンを拠点とするワシントン州立大学の〈ブレッド・ラボ〉のディレクター。遺伝学の博士号をもち、大学院で高度古典的遺伝学と遺伝学の歴史/道徳を教える。大学院生とともに西海岸沿岸、北東上部およびその他の地域で、小規模農家のために小麦をはじめとする穀物を育種する。

 

********************

 

日本では以下の日程で上映ツアーを実施します(イベント内容についてはUSツアーとは異なります)。

10月20日(木)19:30:渋谷ストア
10月28日(金)19:30:鎌倉ストア
10月30日(日)16:00:ベイサイド・アウトレットストア
11月4日 (金)19:30:ゲートシティ大崎ストア
11月11日(金)20:30:二子玉川ストア
11月13日(日)13:00/17:00:京都ストア
12月2日 (金)19:30:アウトレット札幌南ストア
12月2日 (金)19:30:サーフ大阪/アウトレットストア

ご予約、お問い合わせは各ストアへ

*本イベントは無料です。ご予約は定員になり次第、終了させて頂きますので、あらかじめご了承ください。

 

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コメント

刺激されるテーマです。
持続可能な食料を具体的にどこで、どのように調達するのか?
また、革命とはどのように起こすのか、あるいは起こるのかをもっと端的に表現していただきたかった。
下から崩す事は理解できますが、それはでは生産者側をどのように意識革命をしていくのか、または消費者の意識革命をどのように煽動していくのか、この部分を今後の歩みの中で示して頂きたい。

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