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ダムネーション:石木ダム建設阻止活動をご支援ください

 by 辻井隆行(パタゴニア日本支社)

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すべてのテクノロジーには利点と弊害があります。開発されてから50年以上が経ったダムも同じで、近年はとくにその弊害がおよぼす影響が顕著になってきました。そうした背景から、米国では多くのダムについて経済的、環境的、文化的観点からその必要性が議論されはじめ、不必要なダムの撤去が進んでいます。その様子は映画『ダムネーション』でご覧いただけます。

日本には現在2,800基ものダムがあります。日本では高さ15メートル以上のものをダムと呼びますが、それ以下の小さな構造物も含めると、その数は10万に迫るとも言われています。ダムが日本の戦後の経済成長と国の繁栄にとって多くの役割を果たしたことは事実です。しかし、21世紀に入り、ダムによって私たちが失ってきたものが明らかになってきました。ダムは川の生態系を詰まらせ、魚や野生生物の生息環境を壊し、水質を悪化させます。一方、こうしたコンクリート建造物は老朽化するため、もたらされる利益は限られ、簡単にいえば、その価値は長くはつづかないのです。残念ながら、日本では現存するダムの必要性について行政が科学的な見地から客観的に評価したことはありません。

そして、日本にはいまも80にも上るダム建設計画が存在します。なかでも、長崎県東彼群川棚町に建設が予定されている石木ダムは、深刻な環境的、経済的、そして人権的な問題をもたらし、それらは私たち日本人がもう一度真剣に目を向けるべき問題です。

【 写真上:石木ダムの建設により沈む予定の長崎県東彼杵郡川棚町川原(こうばる)。道に沿って流れる石木川は川幅が狭く、水量も少ないとても小さな川 写真:村山嘉昭 】

石木ダムの計画が持ち上がったのは1962年で、すでに計画から50年以上が経過しています。ダムの建設予定地は川幅が狭く流量も少ない石木川という小さな川です。事業主の長崎県と佐世保市によれば、ダムの目的はおもに隣市である佐世保市のための水の確保と、石木川の本流である川棚川上流の治水となっています。しかし、人口の減少や節水型機器の普及など水の需要は著しく減少しており、事業主が提示する将来の水需要予想はとても科学的とは言えないことは、下記の図Aから理解できます。また治水については、川棚町長がダムに頼らない方法で洪水などの水害を回避できることを理解していると公の場で明言しています。

 

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【 現地を訪れて最初に感じたのは、そこが日本人のふるさとを象徴する場所だということ。昔ながらの方法で田植えの準備をする住民 写真:村山嘉昭 】

 

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【 石木川 写真:辻井隆行 】

 

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図A

 

このように必然性が著しく低い石木ダムが造られることによる問題は、大きくわけて3つあります。一つ目は人権的な問題です。建設予定地には小さな子供から若い夫婦、そして年配の方まで、いまも13世帯60名が暮らしています。日本のダム史上、土地収用法を盾に、住民が暮らす家屋や農地や墓などを行政代執行によって強制収用してまで造られたダムはありません。

二つ目は環境的な問題です。ダム建設予定地には県や国のレッドデータブックに登録されている132種にものぼる植物や生物が生息しています。ダムが造られれば生態系に大きな影響が出来ることは間違いありません。

そして三つ目は経済的な問題です。このダムには関連工事等も含めるとおよそ540億円もの貴重なお金が使われようとしています。すべてが直接的に税金から使われるわけではありませんが、元をただせば国民/県民/市民の大切なお金です。またダムや周辺施設の維持管理費は、将来にわたって水道料金に上乗せされるため、佐世保市の次世代世帯の大きな負担にもなります。

 

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【 年に一回の行事である“ほたる祭り”に向けて、いのしし料理の準備に精を出す村のお母さんたち。いつ会っても前向きで、こちらが元気をもらうことになる 写真:村山嘉昭 】

 

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【 ほたる祭りは、県内外から来た1,000人もの訪問者でにぎわった。地元の料理で腹を満たしながら、暗くなるのを待つ訪問者 写真:村山嘉昭 】

 

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【 日が暮れると数千匹のホタルが石木川の水面と森の木々を美しく照らす。東京生まれの僕は文字通り息を飲んだ 写真:村山嘉昭 】

 

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【 祖父母が暮らす川原が大好きな子どもたち。小さいうちから遊びに来ていたので、昆虫やカエルを捕まえるのもお手の物 写真:村山嘉昭 】

 

このような事実から、私たちパタゴニア日本支社はダム建設阻止活動を支援し、現地に住む人びとの人権と環境を守りたいと考えています。同時に、佐世保市の未来について多くの方とともに考え、この事業に関わるすべての利害関係者と協力しながら、佐世保市や川棚川流域の市民にとってより良い解決策を見出すことを願っています。

最後に、今年4月6日に私たちが現地の方々、そして石木ダム建設反対弁護団とともに外国人特派員記者クラブで行った記者会見での、現地に住む地権者の石丸勇氏によるスピーチをご紹介します。

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ここにお集まりの皆さま、私たちのために記者会見の場を作っていただき感謝いたします。私は、石木ダム建設計画地の住民で石丸勇と申します。もう半世紀近くダム問題で苦しめられています。私たちの人生の大半は、ダム問題に翻弄され続けた人生だと言っても過言ではありません。これからも続くと覚悟はしていますが、何とかこのダム建設を止めたいと考えています。

石木ダム建設予定地は、日本の原風景が残る素晴らしいところだとよく言われます。私の住む川原(こうばる)は、今、石木川のほとりに黄色の帯のように菜の花が咲いています。初夏にはホタルが飛び交い、秋にはコスモスの花が咲きます。素朴な里に13戸60人が家族のように助け合い、質素ながらも心豊かに暮らし石木川流域の自然を守っています。

現在、起業者(長崎県と佐世保市)は土地収用法をかざして、私たちの土地や家、立木などを強制的に取り上げようと手続きを進めています。実は、水没予定地の一部は、太平洋戦争(第二次世界大戦)中に軍需工場の疎開先として日本海軍の強制収用を受けた歴史があります。戦時中の強制収用は、明治憲法の下で当時の軍事政権が行なったことです。今回は、当時とまったく違います。私の友人は日本国憲法第13条を取り出して、憲法に規定されている権利が上位で、強制収用は憲法違反だから頑張れと励ましてくれます。生命、自由及び幸福追求の権利を基本理念とする民主的な現在の日本国憲法の下で、この憲法第13条を無視して、いとも簡単に強制収用が行われてはならないと言っているのです。街頭署名でも「強制収用だけは絶対行ってはならない」と多くの人が理解を示してくれていますが、起業者の暴走が気になります。

私の田んぼも強制収用の最初の対象地になっています。近々収用裁決が出ると聞いていますが、収用裁決されても田んぼを作り続けます。今年も耕作の準備を始めました。手前味噌ですが、川原の米はとても美味しいのです。出来れば、ここで皆さんに食べていただきたいくらいでした。黄金色の稲穂の美しさ、自分で作った安全・安心のご飯を食べる時、私は幸せを感じます。戦後繁栄し贅沢になった日本ですが、これこそ真の贅沢であり最高の幸せです。この幸せを子や孫に残さなければなりません。この田んぼを守り続けていかなければなりません。 水は無いより有った方がよい、でも、強制収用までしてダムを造らなければならない理由はどこにもありません。私たちは、不要なダムのためにこのふるさとを水の底に沈められることが、どうしても我慢できないのです。

「義は私たちにあり」と自信を持っていますが、悲しいかな、今の日本の政治は理に適っていません。自然は破壊され続けています。私たちは今窮地に立たされています。ご支援をよろしくお願いいたします。

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石木ダム建設阻止活動をご支援ください

Take_action皆様のご理解とご支援をお願いします。石木川まもり隊のウェブサイトで詳しく学び、この不要なダムの建設を阻止し、影響を受ける居住地の強制収用を中止させるためにChange.orgから署名してください。

行動を起こそう:署名する

 

 

 

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辻井隆行はパタゴニア日本支社長

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コメント

【石木ダム問題に勝者も敗者もいらない】

新聞やインターネット報道で、石木ダム問題を知り心を痛めています。また、辻井支社長をはじめ、パタゴニアの勇気ある取り組みに敬意を表した上で、以下、思うところを投稿致します。

そもそも、地域開発の問題に正論はひとつではありません。それぞれの組織、それぞれの立場に正論があり正義があります。

正論をぶつけ合う時、お互いが「データなどを示して相手が反論できないことを言おう」として、それぞれの正論で相手を押さえ込もうとします。

こうした議論の結末は、最終的には「権力(持っている権限・お金・人の数など)」の強権行使で決着するのが常で、歴史上、数々の悲劇を生み出してきました。これは、政治でも企業組織でも同様です。では、こうした「正論のぶつけ合い、つぶし合い」の悲劇を避ける方法は無いのでしょうか?

絶対にあるはずです!

行政の側(特に直接的な意思決定者)には、いまさら結論を見直すことは、自分たちに問題解決能力がないことを認めることになってしまうのではないかという自尊心や心理的負債感への不安があるのかも知れません。

しかしそれは、数十年も前に立てた「ダムは必要か?必要でないか」という問いに対する、「勝った、負けた(=正しかった、間違っていた)」の結論を無理やり導こうとするからであって、もう一度、「そもそもの問いの立て方自体が現在において正しいのかどうかを考え直してみよう」「あるべき姿を導くためには、どのような問いを立てるべきなのか、もう一度、考えてみよう」とすれば、勝者も敗者もいなくなるはずです。

「間違った問い」にも、それぞれの立場が考える正しい答えが存在し、それが取り返しのつかない結果を導いてしまいます。

行政と地域の住民の皆さんが一緒になって、未来に対して何をなすべきなのか、まずはもう一度、「正しい問い」を問い直してもらうことを切に祈りたいと思います。

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