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Go Renewable 2015:自然エネルギーでまちづくり。全国に広がる「ご当地電力」

高橋真樹(ノンフィクションライター)

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ぼくは、全国各地に広がっている自然エネルギーを通じたまちづくり、いわゆる「ご当地電力」と呼ばれる活動を精力的に取材してきました今年、その取材をまとめた新刊『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)を出版したばかりです。その経験から、いま各地で起きている変化についてお伝えします。

独占されたエネルギーを取り戻す

これまで電気や熱といったエネルギーについては、国や電力会社がやるべきことで、一般の人はせいぜい日々の節電などごく狭い範囲のこと以外にはやれることはないとされてきました。でも、3・11の原発事故を受けて、「このままエネルギーを誰かに依存していてはいけない、自分たちでも積極的にエネルギーに関わらないと!」と感じた人たちが行動を始めています。

人々は地域のコミュニティで、仲間たちと一緒に小さな電力会社を設立します。例えば、太陽光発電や小水力発電などの自然エネルギー設備を設置して、売電をはじめたのです。この動きの意義は、単に地域で発電するようになったということではありません。

エネルギーが自分たちとは関係のない、遠い存在になってしまったために、多くの人は日本全国の海岸に原発ができても無関心になっていたという要素もあるでしょう。でも、つい100年ほど前までは山間部で住民自らが出資をして、水力発電機を設置、地域で発電するということが行われていました。自分たちで、自分たちのエネルギーをあたり前のように手がけていたのです。「ご当地電力」の動きは、今では独占されてしまったエネルギーを、もっと一人ひとりの手に取り戻そうという活動なのです。

福島と東京のご当地電力を紹介

具体例を2つほど紹介します。ひとつは、原発事故が起きた福島県西部の会津地方に誕生した会津電力です。会津電力には、地域の会社経営者など幅広い人材が集まっています。社長には、喜多方市で代々続く造り酒屋の当主、佐藤彌右衛門(さとうやうえもん)さんが就任しました。

なんで酒屋さんが電力会社を立ち上げたの?と思うかもしれませんが、彌右衛門さんの酒造会社では、自ら農場を経営し、お酒に使う米作りからこだわって育てていました。自分たちが育てたうまい米と、会津が育んだ素晴らしい水があれば、おいしい酒が造れます。ところが原発事故によって、自慢の米や水が汚染される危機に陥りました。

そのとき彌右衛門さんは、事故を起こした原発でつくった電力がすべて都会に送られていて、福島県民の役には立っていないことに気づきます。それなのに、今回の事故によって多くの県民が被害を受けてしまいました。今までエネルギーの供給先のことなど考えたことのなかった彌右衛門さんが、自分たち自身で福島の人のためのエネルギーを手がけないといけないと思うようになったのは、そのときのことです。

彌右衛門さんたちは2013年末に地域のためになる小さな電力会社・会津電力を立ち上げます。そして第一弾として会津各地に22カ所、約2.5メガワットの太陽光発電設備を設置しました。それは、一般家庭約750軒分の電力をまかなっていることになります(2015年1月現在)。そしていずれは、会津地方全体のエネルギーをまかなっていきたいと考えています。会津電力はお金を儲けるための会社ではないので、事業で得た収益で、普及啓発をはじめとする地域貢献にどうつなげていくか、ということも同時に考えています。

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【 会津電力を立ち上げた 喜多方市の酒屋の当主、佐藤彌右衛門氏。写真:高橋真樹 】

もうひとつは、東京都調布市で小峯充史さんが立ち上げた調布未来(あす)のエネルギー協議会です。調布市は、東京西部にあるベッドタウンです。震災のときにサラリーマンをしていた小峯さんは、原発事故を受けて「後の世に、きれいな地域を残したい」という思いで独立します。まちづくりの活動を通してつながった仲間たちとともに会社を設立。調布市とも連携して、市の公共施設の屋根を借りて、そこに太陽光パネルを設置しました。設備は33カ所で、合計で約1メガワットになっています。しかし、都市部で空いている屋根を探し回るのも限界があります。調布未来のエネルギー協議会では、何度も会議を行って、市民のために何をするのが最善かについて話し合いました。

その中から小峯さんたちが目をつけたのが省エネです。人が多く暮らし、たくさんのエネルギーを消費している都会では、発電よりも省エネの方が効果があります。そこでまずは太陽光発電で収入を上げ、その資金で家庭や集合住宅の省エネに活かす仕組みをつくろうと動いています。

会津と調布の取り組みがまったく違っていたように、自然エネルギーのポテンシャルは地域ごとに異なっています。また、集まった人ごとにまた違ったアイデアが生まれてくるので、正解はひとつではありません。共通していることは、それが地域のメリットになるかどうかということです。このように、地域でエネルギーに取り組むことの意義は、ふつうの人たちがエネルギーを自分ごととして捉えるようになることなのだと、ぼくは考えています。

ただ、ご当地電力は今までにはなかった新しい産業をつくろうという動きだけに、財政面や規制の壁などたくさんの課題に囲まれています。しかし、それぞれの地域でモデルをひとつづつ創っていくことで、その影響は広がっています。実際、ドイツや北欧などエネルギーシフトを実現した国々では、そうやって地域からはじまった変化が、国全体に波及しました。日本では、そうした動きが産声を上げたばかりですが、多くの人がこの動きに関心を持ち、参加していくことで、より輝きを増していくのだと思っています。


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【 書籍でも紹介した全国ご当地電力マップ 】


とはいえ、誰もがご当地電力を立ち上げられるわけではありませんし、そうする必要もありません。それぞれの立場でムリをせず、身の丈にあった活動を続けていくことが大切です。具体的には一人の市民として、どんなことができるでしょうか?ご当地電力によっては、発電設備を作るための「市民出資」を募っている団体もあります。会津電力の設備にも、この市民出資が活かされています。一口10万円くらいから出資して、10年や15年ほどで少しの配当がついて還ってくるというこの仕組みは、ただ銀行に預けておくよりも利率が良いというだけでなく、自分のお金を社会の役に立つ物に自分の意志で活用できるというメリットがあります(※)。

出資だけではなく、こうしたご当地電力が主催するイベントに参加したり、さまざまな形で少しずつ関わってみるというのもお薦めです。「自分は少ししか関われないから……」と遠慮する必要はありません。こうした活動はまちづくりも兼ねているので、フルタイムで働く人だけで運営するのは大変だし、広がりが出てきません。でも少しだけ関わる人が増えることで、活動に幅が出てくるのです。

自分の住んでいる地域にご当地電力がない人でも、出資やイベントの視聴などは可能です。身近な友人たちと、ちょっとした映画会などのイベントを主催してみるのも良い機会になります。
『ご当地電力はじめました!』には、他にもいろいろな方法を紹介していますが、まずはこれまで受け身だったエネルギーについて、自分たちの側からやれることから始めてみませんか?

※自然エネルギー事業は出資対象としては比較的安定した物ですが、元本保証をしているものではありません


高橋真樹はノンフィクションライター。平和協働ジャーナリスト基金奨励賞受賞。放送大学非常勤講師。世界各地や日本全国をめぐり「持続可能な社会」をテーマに取材を続けてきた。最新刊『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)など、著書多数。エネ経会議が主催する「高橋真樹の全国ご当地エネルギーリポート」では、全国の地域エネルギーの最新事例を連載している。

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