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我が国をダムから解放する:アメリカの水生態系を修復するためのマット・シュテッカーの取り組み(後編)

THE USUAL x patagonia

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【 冷たい水がちょろちょろとしか流れ出ていないグレンキャニオン・ダムの下流には、トラウトが生息するエリアが不自然に形成されている。2013年、アリゾナ州とユタ州の州境。写真:Ben Knight 】

 

編集者記:映画『ダムネーション』完成後、THE USUAL誌のSPRING/SUMMER2014号「THE WATERSHED」に掲載された本映画のプロデューサー、マット・シュテッカーへのインタビューの前編に引きつづき、本日は後編をお届けします。

 

『ダムネーション』のシーンのなかで最も感動的なものに、エルワ・リバーの先住民のコミュニティが、サーモンの歴史とその関係について、なぜこの種が彼らにとってそれほど神聖なものであるかを語る部分があります。多くのダムがアメリカ先住民のコミュニティに深く影響したようですね。

はい、多くの先住民族はサーモンの遡上を中心にしていました。サーモンは一年を通して生活手段を提供してくれたからです。多くの先住民にとって遡上性魚は年間を通じて絶対的な生活の中心だったのです。当然のことながら、こうしたサーモンの遡上が見られる川はまた、水力発電の可能性のある川でもありました。もしいまこれらのダムのいくつかが提案されたとしても、建設されることは決してありません。多くの場合、それは文化的大虐殺だと見なされるでしょう。

『ダムネーション』ではダムにともなう文化的問題をとらえることが大切だと思いました。サーモンのいない川であってもです。コロラド・リバーに作られたグレン・キャニオン・ダムは何百もの文化遺産を水没させました。それは国中で起きたことで、アメリカ先住民の重要な文化遺産が沈められてしまいました。その影響はダムのある場所だけではなく、水域全体におよびます。だから先住民の文化にとっては、ダムがあるのが何百マイル上流でも下流でも、巨大な影響となるのです。1つの、あるいは2つのダムが、何ダースもの民族に影響を与えています。

サーモンはダムのストーリーで語られることが多いですが、スチールヘッドについても焦点が当てられています。それは大局的な見地としてなぜ重要なのでしょうか?

スチールヘッドはフライロッドで釣る北米の魚のなかで、疑いなく最も崇拝されている魚です。スチールヘッドのせいでフィッシング狂になった人がたくさんいます。サーモンについて語られるとき、それはしばしば食生活や商業漁業の経済的利得や、生態系への利点についてです。スチールヘッドは同様の恩恵をもたらしながら、川での釣りを趣味とする人にとってはさらなる重要性があるのです。『ダムネーション』に登場するリーのような、オレゴンの川岸に座ってスチールヘッドを眺め、保護する人たちです。リーはスチールヘッドのフィッシング狂から、それを釣ることは二の次で、ただスチールヘッドとともに存在したいと思うようになりました。

いくつかのサーモン種とは違い、スチールヘッドは海へ向かう前に、多くの場合数年にわたって水域全体で暮らします。水域全体で暮らすため、彼らは健康な水流と生息地に依存します。健康なスチールヘッドの個体数が見られるということは、その水域はそれを維持するだけ健康であるという証拠です。つまり他のすべての野生種が必要とする質の生息地と水があるということです。生態系の修復を達成するには、指標種がとても重要です。スチールヘッドを修復することは、むしろ水域やより幅広い生態系の健康を修復し、管理する手段なのです。

釣りはしますか?

いまの仕事をするようになったきっかけは、私たち兄弟が完璧な釣りキチとして育ったからです。アラスカの大学を卒業後、アラスカとモンゴルでフライフィッシングのガイドもしました。それ以来は、愛するこれらの野生の釣り場を修復し、保護することに重点的に取り組むことに焦点を当てるようになり、それほど釣りはしないようなっていきました。過去10年間はダイビングのマスクとシュノーケル、フィンをつけて野生のトラウトやサーモンと泳ぎまわることのほうが、私にとっては楽しみです。いまでは水中で自生の生息環境にいるこれらの象徴的な魚を写真や映像に撮ることに、より情熱を抱くようになりました。この映画を製作することは視聴者を私と一緒に水中に連れていき、野生魚と自由に流れる川の美しさに浸ってもらう手段でした。

ダム撤去という行動主義に足を踏み入れるようになったきっかけは?

ダム撤去の取り組みに私を突き動かしたのは私の故郷にあるスタンフォード大学が所有していたシアーズビル・ダムでした。もう16年もその撤去のために戦っています。多くの人がスタンフォード大学をアメリカで最も進歩的な大学だと見なしていますが、にもかかわらず、必要のない破壊的なダムを所有しています。絶滅が危ぶまれるスチールヘッドを阻害し、水域全体を劣化させる疲弊したダムを持ちながら、同時にグリーンで持続可能な大学だと主張しています。だから私は〈Beyond Searsville Dam〉という同盟を設立し、すでに30のパートナー組織を集めました。私たちはスタンフォード大学にダム撤去を含めた代替調査をするよう促し、今年の年末までにダムの将来についての決定が下される予定です。

撤去の候補となっているダムがある一方で、アラスカのスシトナ・リバーに予定されている総工費52億ドルの225メートルのダムなど、これから建てられるダムも存在します。でもこれはアメリカだけの問題なのですか?

中国、インド、そして南米など、まさにそこら中で、現在も巨大ダムの提案がなされています。先住民たちは居住地と領地がダムで水没してしまうのを防ぐために体を張って戦い、虐待を受けています。アラスカの友人たちはここ何十年間でアメリカで提案されたなかでも最も滑稽なダムについて、みずからの州政府と戦っています。幸いなことに、オックスフォード大学が巨大ダム建設事業計画の経済を査定した決定的な研究結果を新たに発表しました。それによれば、巨大ダムはまったく非経済的であり、その計画に必要な費用は当初の見積りの2倍になってしまうと結論付けられています。

私たちはそれより数歩先、あるいはアメリカがすでに犯したのと同じ過ちを犯そうとしている多くの国の数十年先を行っています。多くの国がダムの建設を止めさせようとする私たちを偽善者呼ばわりします。なぜなら私たちはすでに国中にダムを建てているからです。しかし、『ダムネーション』でアメリカに焦点を絞ることによって、私たちはこの国におけるダム建設の歴史を見せることができると期待しました。たしかに、私たちは建てまくりました。狂ったようにね。そしてその結果はどうでしょう。いま私たちはその損害を元に戻すために大金を使っているのです。願わくば、この映画が他の国の新しいダムの建設中止や、すでに建てられているダムの撤去を引き起こすきっかけになればと思います。

では基本的に、アメリカは何をすべきでないかを示す事例というわけですね。

まさにその通りです。私たちはこう言っているのです。私たちはやりました。それを認めます。でもそれが引き起こした混乱を見てください。そして皆さんはそうならないように、それぞれを守ってください、と。

終。

 

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【 エルワ・ダムが撤去される前にその下で『ダムネーション』のためのサーモンの水中撮影をするマット・シュテッカー。写真:Ben Knight 】

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ダムについて5つのよくある質問

なぜダムを建てるのですか?

ダムを建てるおもな理由は洪水防止、灌漑、地方自治体への水の供給、電力生産の4つです。けれども技術の改善とより賢明な計画により、ダムで川全長を塞き止めることで生じる文化や生態系への否定的な影響を引き起こすことなく、そうした必要性をより効果的に満たすことはできます。

ダムが川に与えるおもな影響は何ですか?

ダムは川の流れを妨げ、水質を劣化させ、川の不可欠な栄養素と堆積物の移動を阻止して、魚や野生動物の生息地を破壊し、楽しみの機会も奪います。貯水池は流れを緩やかにするとともに川幅を広げ、さらには水温を上げ、水質を悪化させ、そして水域全体に破壊的な非在来種を拡散させて、在来の野生生物を捕食し、競合させます。ダムと貯水池の環境的、経済的、社会的フットプリントは、源流を養う高山の頂から河口まで川の全長におよぶこともあります。

なぜダム撤去に関心をもつべきなのですか?

ダムを撤去することは水域全体の生態系を修復し、野生で持続可能な漁場とそれにともなう仕事を復活させ、沿岸の海岸と湿地帯を保護し、水質を高め、隣接する地域に住む人びとと先住民文化を改善させる効果的な方法であることが証明されています。

ダムの撤去を決定するのは誰ですか?

通常は個人または小さなグループが主導権を取りますが、これはときに何十年もかかります。ダム撤去の最終決断を下すのはダムの所有者(個人/公益事業、連邦/州機関など)です。地元の活動家、地方自治体、天然資源機関、その他の団体からの圧力などが結集し、ダム所有者に撤去を促します。多くの場合、撤去費用よりもダムの維持/管理のほうが多額の費用がかかります。

ダムはどのように撤去されるのですか?

撤去の技術は環境的要因や物理的な形状、建設方法などがそれぞれ違うため、ダムによってかなり異なります。典型的な撤去法は制御発破と重機による段階的解体、あるいはそのどちらかです。通常まず貯水池が取り壊され、堆積物を安定させてから移動、そして(または)川下に流出させてから、最終的にダムの構造自体が解体されます。

DamNationfilm.comより資料提供

 

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