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我が国をダムから解放する:アメリカの水生態系を修復するためのマット・シュテッカーの取り組み(前編)

THE USUAL x patagonia

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マット・シュテッカーは爆破することを望んでいます。私たちの川の生態系を人質にする、時代遅れのコンクリートの建造物を爆破したいのです。生物学者、写真家であり、活動家であるシュテッカーの行動への最新の呼びかけである『ダムネーション』は、イヴォン・シュイナードとともに着想し、〈Felt Soul Media〉と共同でパタゴニア社のために製作された映画で、彼は水中映像の撮影も手がけました。このドキュメンタリーは古くなり危険で、しかも納税者に何百万ドルもの負担をかけている、撤去されるべき何千ものアメリカのダムの物語です。

編集者記:映画『ダムネーション』完成後、THE USUAL誌のSPRING/SUMMER2014号「THE WATERSHED」に掲載された本映画のプロデューサー、マット・シュテッカーへのインタビューを前編/後編に分けてお伝えします。

【 冷たい水がちょろちょろとしか流れ出ていないグレンキャニオン・ダムの下流には、トラウトが生息するエリアが不自然に形成されている。2013年、アリゾナ州とユタ州の州境。写真:Ben Knight 】

 

まず基本的なところからはじめましょう。なぜダムは悪いのですか?

理由はたくさんあります。ダムは国中で、水の流れを塞き止めるだけでなく、川の栄養素の移動を妨げます。また沈泥、砂、砂利、玉石などの堆積物が下流へ流れるのを遮り、沿岸の湿地帯や海洋環境にも影響を与えます。ダムは生態系のみならず、気候変動にも影響をおよぼします。海面上昇は10年前に予想されていたよりも早く、これに持続可能なやり方で対処する数少ない方法のひとつは、河口に堆積物が流れるようにすることです。これにより海岸、防波島、沿岸湿地帯が増え、海面上昇から沿岸地域を防護します。

また逆の視点から見ると、ダムはサーモン、スチールヘッド、ニシン、チョウザメ、ウナギといった淡水と海水を行き来する遡河性の、つまり魚という栄養素の流れも妨害します。たとえばロッキー山脈のような内陸の奥深くにある森の健康も、コロンビア・リバーを上流のアイダホ州に向けて何百マイルも泳ぎ、スネーク・リバー水域全体に海からの栄養素をもたらす何百万匹ものサーモンに依存しています。太平洋サケだけをとっても、アメリカスギから、オルカ、グリズリー、ミサゴまで、最低137の種が餌の一部として依存しているのです。私たちは陸と海のつながりを断つことの極めて大きな影響を完全には理解していないと思います。

ダムに何がしかの利点はあると思われますか?

長期的に考えると、答えは「ノー」です。ダムはいくつかの利点のために建設され、我が国の成長のある部分にとっては重要な役割を果たしてきました。しかし建設目的であったそれらの利点に対しては、いまやより理にかなった、かつ害の少ない多くの代替案があります。だからダムは真に時代遅れの、破壊的な技術なのです。

一般的な神話に、ダムがクリーンなエネルギーを提供するということがあります。これはエネルギー会社が言っていますが、彼らは二酸化炭素排出という観点からこのように主張しています。でも水質と水域全体への影響という点を考慮すると、ダムは石炭火力発電所に似ています。石炭火力発電所は温室効果ガスを放出するため、大気質と気候変動に明らかに影響を与えています。ダムは水質、生息域の状態、そして生態系の健康を劣化させるという、石炭火力発電と同様の影響を川におよぼすのです。

さらに、実際にダムが温室効果ガス排出の主要な原因であることを示す、より多くの研究結果が出てきています。つまり世界的に見て、ダムと貯水池は温室効果ガスの最大の排出源のひとつなのです。ですからダムがクリーンな水力発電を提供するという主張は根拠に基づくものではありません。いくつかの州および投資ポートフォリオが再生可能エネルギーのリストから水力発電ダムを除去するようになったのは喜ばしいことです。

またダムと貯水池は長期的な水の貯蔵庫としては恐ろしく非効率的です。沈殿物によってその貯蔵許容量は年々減少し、しかも貯水池の表面は巨大なため、ほとんどの場合、実際に使われる水の量よりも多くが蒸発してしまいます。水効率を高める手段、節水、地域に適した農作物の選択、地下水の補充と貯水などを選ぶほうが、環境、経済、社会的な悪影響がなく、はるかに効果的です。

『ダムネーション』を見るまで私たちはダムについてほとんど知りませんでした。映画のなかで監督の一人であるベン・ナイトが同じことを言っています。なぜもっと多くの人がこれらの問題について語らないのでしょうか?

アメリカには8万5千以上のダムがあり、国民のほぼ全員が複数のダムから数マイルの圏内に暮らしています。地図を見ると、ダムはありとあらゆるところに存在しています。しかし多くの人は巨大な水という塊があるのはいいことだと思い込んでいます。

川について人びとに知らせ、熱意を抱いてもらう。そしてダムが撤去されたあとの川の驚くべき修復を見てもらうには、言葉ではうまくいきません。ダムを爆破させるというのはすばらしい事象で、瞬時に川の未来を変えます。視覚的にも信じがたいことです。だからイヴォンと私はこの映画を作ることにしたのです。実際(笑)、この映画を一緒にやらないかと映画監督のトラビス・ラメルに話を持ちかけたとき、彼は私たちを狂人のように見て、しかも退屈なテーマだと思ったそうです。だからトラビスとベンは最初これを断りました。

映画では8万5千のダムのうち、水力発電を行っているのは2千5百だけだと言っています。なぜこれほど多くのダムがあるのですか?

我が国でダムが建設されてきた理由には、水力発電、貯水、洪水防止の3つがあります。

たとえば多くのダムが存在する南西部の砂漠では、その目的に水力発電はありません。ダムが建てられたのは灌漑のための貯水池、あるいは水道水を供給するための水源です。またいくつかは娯楽用や家畜の水飲み場として建てられました。より湿った北西部にあるコロンビア・リバーでは、多くのダムが水力発電のために作られ、そのうちいくつかは第二次世界大戦時の戦闘機やその他の軍事装備の製造に重要な役割を果たしました。

いずれ疲弊したダムがすべて撤去される望みはありますか?

あります。パタゴニアと河川保護団体〈Save Our Wild Salmon〉とともに、私たちは全国で行動を起こすためのキャンペーンを展開しています。焦点としているのはスネーク・リバー下流の4基のダム撤去です。でもキャンペーンの手紙でオバマ大統領に求めているのは全国の疲弊したダムの取り締まりです。だから手紙の冒頭で、多くのダムがその機能をまったく果たしておらず疲弊していることを明確に説明しています。それらの多くは危険であり、いまこそ連邦政府がその撤去に踏み出すときです。スネーク・リバー下流の4基のダムの撤去の必要性については詳細に語っています。連邦政府が所有/管理するこれらのダムを撤去することは、なかでも自立能力のある野生のサーモンの最大の遡上を修復する最も重要なチャンスだからです。コロンビア・リバー水域は歴史的にアメリカ最大のサーモン遡上の場です。それは国の誇りであり、水域修復の焦点であるべきです。

この映画を製作するまで予期していなかった課題にはどのようなものがありましたか?

イヴォンと私が映画を作ると決めたとき、何を達成したいかを一緒に書き出しました。主要な目的はなるべく多くの人に見てもらい、芽を出しはじめたダムの撤去運動に拍車をかけることでした。早い段階で私たちは多くのダムを識別しました。撤去を支持するもの、撤去計画のあるもの、撤去したいもの、のように。このリストには最初(笑)、数ダースのダム撤去の物語がありました。最大の課題はそれらを片手に収まる数の物語、人物、そしてダム問題に絞り込むことでした。語りたい良い話がたくさんあって、挫折しそうになる作業でしたが、最も力強いストーリーが浮上してきて、私たち全員その結果を非常に誇りに思っています。

後編につづく。

 

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【 エルワ・ダムが撤去される前にその下で『ダムネーション』のためのサーモンの水中撮影をするマット・シュテッカー。写真:Ben Knight 】

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