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流れよ 長良川

by 武藤仁(長良川市民学習会

えほん長良川

私の書棚には大好きな『えほん長良川』がある。表紙は真っ黒に日焼けした少年が魚とともに元気いっぱい泳いでいる絵である。

まさに私の少年時代である。岐阜市長良に生まれ育った私は、夏になれば毎日長良川で泳いでいた。川には水泳学校も開設されていた。岸には貸しボート屋さんがあり、多くのボートが出て川は賑やかだった。河原には海水浴場のように仮設の店がたくさん並び、泳いだあと、そこでかき氷を食べるのが私たちの贅沢な楽しみだった。あの川の匂い、あの川の冷たさ……私のなかに生きている。

『えほん長良川』は美濃和紙で折りたたみ編集され、雪を頂く源流から踊りの町郡上、刃物の町関、路面電車が走る岐阜市、濃尾平野、そして伊勢湾へと、流域の人びとの暮らしのなかを子ども、魚、鳥とともに流れていく姿を描いている。展開すると約10メートルの帯になり、「このままで このままで流れよ 長良川」の思いを貫いている。『えほん長良川』が発行されたのは1997年。長良川河口堰の建設によって長良川の流れが遮断されたのは1995年である。長良川の流れを止めてはいけない、という強い思いから作られた。

来年、堰閉鎖から20年を迎えようとする。高度経済成長期、伊勢湾工業地帯の用水確保を目的に作られた長良川河口堰であるが、一滴の水も工業用水に使われていない。また使う計画もない。環境は悪化した。堰周辺の川底は厚いヘドロで覆われ、ヤマトシジミ漁は不可能となった。堰直上流の広大なヨシ原は9割消滅し、鳥類、魚介類の生息の場は奪われ、生態系は崩された。河口堰は海と行き来するアユなどの回遊魚の大きな障害となり、生息環境は深刻である。最近ではアユの絶滅危惧種指定の論議が岐阜市で行われている。1300年の歴史をもつ長良川鵜飼に暗い影を落とすことにならないか、危惧される。 そして河口堰開門を期待する声は高まっている。

堰を開門し、汽水域を取り戻し、長良川の生態系回復を急がなければならない。開門による「塩害」の危惧は開門調査によって円満に解決できる。速やかに開門調査することが喫緊の課題である。水資源開発施設として必要のない長良川河口堰の開門はすぐにできる。河道断面を狭めている河川構造物河口堰は治水に有害である。撤去を展望した議論も求められる。

河口堰が閉鎖されて20年が経とうとするが、流域住民の開門の願いは大きくなることはあっても、小さくなることはない。河口堰建設の話が持ち上がった当時、地元漁民を中心に約26,000人が原告となる裁判が闘われた。つづいてカヌーや釣りで「ダムの無い清流長良川」をこよなく愛する人びとが立ち上がった。この闘いは全国に広がり、長良川河口堰建設は「環境破壊、そしてムダな」公共事業の象徴となった。河口堰建設は反対の世論に抗って強行されたが、「川は誰のものか?」「川とは何か?」を問題提起し、河川法と河川行政を見直すものとなった。建設後も建設費負担する都市住民の側から繰り返し裁判の闘いが起きている。地元では市民と研究者の環境悪化を監視する調査・研究活動が連綿とつづいている。

2010年、長良川を舞台に「清流がつなぐ未来の海づくり」をテーマにした「全国豊かな海づくり大会」開催にあわせて、「河口堰の開門」の声が盛り上がった。同年10月名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)における長良川河口堰による生態系破壊の問題提起は、2020年までに実効性のある緊急行動を起こすことを求める生物多様性戦略目標(愛知ターゲト)策定につながるものであった。2011年、大村愛知県知事と河村名古屋市長の掲げた「長良川河口堰の開門調査」(共同マニュフェスト)の実現はCOP10開催地の責務である。

本流の上流にダムをもたない長良川は、まだまだ他の河川に比べてはるかに清流度を誇っている。ダムのない自然の流れをもつ長良川の魅力は大きい。アユ釣り、カヌー・ラフティング水泳など、川と親しむ人の多さはいまでも日本で有数の川である。私は今年も小学1年生の孫とともに岐阜市内でラフティングを楽しんだ。この夏、帰省した娘家族を長良川支流の簗場のアユ料理に誘った。都会育ちの婿は山川の美しさと川の賑わいに驚いていた。長良川は、地域の人びとの暮らしに根ざす川であり、地域住民の誇り・宝であることに変わりない。河口堰建設前の長良川を知る釣り人や地元住民は口をそろえて「長良川はこんなものではなかった!」と、アユが黒い帯のように遡上し、その香りが川辺に漂った様子を語り合う。来年、河口堰閉鎖されて20年になる。堰を開ければ本当の長良川によみがえる。急がなければならない。河口堰を開門し、長良川に流れを取り戻もどし、子どもたちにつなぎたい。

 

 『えほん長良川』より

 山から海へ 緑を運び 海から山へ 魚はのぼる

とうとうと とうとうと 流れよ 長良川

このままで このままで 流れよ 長良川

 

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パタゴニア日本支社では映画『ダムネーション』の日本公開とともに、日本の川に自由な流れを取り戻すため、まずは熊本・球磨川の瀬戸石ダムの撤去、愛知県・長良川河口堰の開門、北海道サンル川のサンルダムの中止のために、行動を起こします。

よみがえれ長良川「河口堰開門調査」の実現を
長良川市民学習会/愛知県

愛知県 大村秀章知事、名古屋市 河村たかし市長にアイチ・ナゴヤ共同マニフェストである「長良川河口堰の開門調査」の実現を求めます。岐阜県の大日ヶ岳に源を発し伊勢湾に注ぐ長良川は、四国の四万十川とともに日本を代表する清流河川として知られます。その流域の豊かな自然環境の回復、地域経済の持続的な健全性のため長良川河口堰の開門を目ざして取り組むものです。1995 年の長良川河口堰運用開始から20 年を迎えようとしています。高度経済成長期に伊勢湾工業地帯を支える水資源開発として計画されましたが、工業用水に一滴の水も使われることなく、利水として開発水量のわずか一割強使用というなか、底層のヘドロの堆積等、堰による甚大な環境悪化は今日明白です。塩水と淡水が混じり合う汽水域を失い、ヤマトシジミの自然更新は不可能となり、生息する多くの生きものは減少・死滅しました。堰運用前とは比較にならない漁獲量の減り、川を仕切った河口堰は産卵・孵化・成長のため川と海を行き来するアユ、サツキマスなどの回遊魚の大きな障害になっています。生物多様性戦略計画の中間点としてのCOP12が開催の年でもあり、COP10開催地愛知県、名古屋市の愛知ターゲット達成に向けた取り組みが注目されています。

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愛知県名古屋市で開催される映画『ダムネーション』試写会とトークイベントにご参加ください

『ダムネーション』を題材として、アメリカの河川と人の付き合い方について学びます。河川は人にとって洪水などによる被害をもたらすものであり、一方で生活と実りになくてはならない水をもたらすもの、そして自然の恵みをもたらすものです。河川と人との付き合い方、ダムの成り立ちや河川政策などは、国によって特徴があり歴史があります。アメリカの河川と人の付き合い方、治水・利水・自然の恵みについて総合的に学びます。

ESD映画試写会とトーク「アメリカの河川と人の付き合い方」
日時:10月4日(土)14:00~
場所:愛知県図書館5階大会議室
参加無料:定員200名

詳細/ご予約はこちらから。

 

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