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牧歌の島:『クロッシング』からの抜粋

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by マイケル・キュウ

第8章:「珊瑚の隠れ家、深い海」より

この環礁は「ロマンスと冒険の交差点という他は何もない場所」への途上にある。サーフィンとブランチのあと、イヴォンと僕はスキフに乗って、この環礁へと接近していた。フランソワがモーターを止める。浮かんでいるのは濁った場所や魚罠からは遠い、トルコ色の快適なラグーン。この砂のフラッツはボーンフィッシュの生粋の住処だ。近くにはポリネシアの最も重要な木であるココナッツの密集林に面して、数軒の朽ち果てた釣り小屋が並んでいる。それはかつて無限に思えた魚の乱獲を、哀愁的にのぞかせている。

「ここにはあまり魚はいないな。一日中探しても、一匹も釣れないときもあるだろう」 あたりを見回しながら、イヴォンは言う。「クリスマス島とか、それ以外でもあまり人の住んでいない場所、つまり乱獲されていない場所なら、400メートル行くか行かないうちに魚がかかる。ここには遠海魚は少しはいるだろうが、かなり釣られてしまっている。タヒチに近づけば近づくほど」 フライロッドとカメラ、そして淡い期待を持って、スキフを降りる。イヴォンは水中をサーチして歩くと、砂と珊瑚のノブに向かってキャスティングする。

[写真上:ボーンフィッシングの一日のために準備するイヴォン・シュイナード。写真:Michael Kew]

「ボーンフィッシングは猟と釣りのあいだの子みたいなものなんだ」と彼は言う。「一日中探していると知覚がとても鋭くなる。ついに見つけると、奴らはすごく強い。本当に凄いよ」

別の日に別のラグーンで何度かキャスティングを試みるも、この旅のあいだボーンフィッシュは一匹も捕まらない。イヴォンは肩をすくめる。「わけがわからん。ここのボーンフィッシングはハワイみたいに季節的なものなのかもしれないな」

サーフィンはそうではない。ツアモツは一年中、全方向からやってくるスウェルに襲撃される。冬も春も夏も秋も、季節は関係ない。これまで波といういくつものダイヤモンドが発掘されてきたし、またこの先も発見されるだろう。僕たちの海での初日、クリス・オキャラハンがこう言った。

「僕がボートを入手してから、貨物船が行かない多くの場所に行くことができるようになった。貨物船は文明のないところには行かないからね。僕らがやっている方法以外、探求する方法はない。ここに来る他の方法はないんだ。飛行機も、ボートも、何もないから。だから自分のボートが必須なんだ」

 * * *

航海の終わり近くの朝。アジサシが宙を舞い、最初の光が水平線を焼く。無限の彼方。温かい日の光で目覚めると、舷窓の外も夢のように目覚めていく。ガラスのようなラグーンが、朝日に呼応して燃える。唯一の音は船体を打ち寄せるゆるやかな水の音だけ。僕は寝台を出て船首へと向かう。

朝の若い空気は重く、無風で暑い。汗がにじむ。時間をまたいだこの探求は、旅を知らなかった僕の人生の章を象徴している。これがどこかに存在することを知りながら、記憶とパスポートのスタンプが欠如した章・・・。ポリネシアの海での洗礼の前に抱くのは、魅惑的な熱帯のイメージと南太平洋の透き通った物語への憧れ。

旅のベテラン、イヴォンが下から現れる。

「あぁ、これは私にとってはパラダイスだ」 うなずきながらそう言う。「子供のころ、南太平洋についてのありとあらゆる本を読んだ。これがやりたかったことだ。いつの日か、ここで姿を消したかった(笑)。女房は熱帯が好きじゃないんだが。じゃなければずっとここで過ごすよ。フッライロッドとサーフボードをもって、サーフィンとボーンフィッシングのできる島を見つけて…」

空想が崩れるにつれて、イメージ全体が消えていく。ディンギーで突き進むと、深みから紺碧のライトの波が現れた。彼らが水から透けて見える珊瑚礁に乗り上がる。フランソワがラインアップまでアイドリングで進む。

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[キャプテン・クリス。写真:Michael Kew]

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[イヴォンのもうひとつのパラダイス。写真:Michael Kew]

ずっと後になって、冷えたヒナノビールを黄昏と楽しみながら、クリスが回想する。

「どんなサーファーにとっても夢だと思う。学校の数学の時間、皆、同じ様な波を描いていた。先生は前で話していて、僕たちはポイントに押し寄せる波の線の上にかぶさるように、小さなヤシの木を描いていた。僕は実際に誰もいないそんな波をしょっちゅう見ることができるんだ」

「そしてここの色。空から海のずっと深くまで、スペクトル上のすべての青がある。青ってすごいよ」

僕らは30時間後にタヒチのマリーナタイアに入港する。印鬱な曇り空と熱帯文明のベタベタした垢に染まったファア国際空港が手招きしている。皆はもうじきロサンゼルスへと旅立つ。今夜、僕の旅はまだつづく。

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