「ニセコ雪崩事故防止協議会の報告書」より

by 新谷暁生(ニセコ雪崩調査所)

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編集者記:待ちに待ったスノーシーズンがやって来ました。パタゴニアも、ミニマリストのデザインと確かな耐久性を備えた多様なスノー製品を取り揃え、元気いっぱいの子供から困難なルートを初滑降するスキーヤーまで、スノースポーツをさまざまに楽しむ皆様のための準備が整いました。そうした「身に着けられるギア」とともに遊びつづける、事故のない安全なスノーシーズンを願うパタゴニアは今日、私たちが信頼し、また雪山に関する豊富な経験と知識と技術をもち、雪崩問題に深く長く献身的に貢献しているひとりである、新谷暁生氏によるレポートをご紹介します。

【 全写真:ヒラフパトロール 】

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受け継ぐことのできるもの

Passiton
かつては赤だったはずのそのジャケットは、いまでは消えない傷や汚れの下で、くすんだピンク色に見えます。ジッパーは4 年前に交換したので、そこだけちょっと明るく、目立ちます。内側には「キッズXXS」のサイズタグがありますが、おさがりの履歴用タグは付いていません。パタゴニアがそれを伝統とする以前の製品だからです。それは約13年前、カイル・アンダーソンの4歳の弟ハックのものとしてデビューを遂げました。そのとき20 歳ぐらいだったカイルは、クレステッド・ビュートのスキー場周辺でハックにスノーボードの仕方を教えながら、当時は赤かったそのジャケットを引率していたことを思い出します。

 【 ちびっ子にパウダーを滑ることができるなら、何日滑ることができるでしょうか。その答えを探すマック・アンダーソン。コロラド州クレステッド・ビュート 写真:Jeff Cricco 】

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遊び時間を延長

Repairtechnicians

長持ちする機能と修理への忠誠 

使い捨てが当たり前のスキー/スノーボード・ファッションの時代にスノー製品を長く使うことは、私たちが知る最も急進的な行為です。私たちは平均でわずか3年しか衣類を所有しません。にもかかわらず新しい衣類の製造に要する素材と工程は、惑星にとってはとても高くつくものです。平均的なアメリカ国民は毎年36キロの衣類やその他のテキスタイル製品を捨て、その85%が埋め立て地行きとなります。捨てられる衣類のほとんどが再利用に適したものであるにも関わらず、寄付あるいはリサイクルされるのはそのわずか15%です。

 【 昨年の冬、裁断テーブルでカッコつけるリノの修理技師たち。左から右:シルビア・アギュレラ、リバー・リース、アンディ・クック、ジョラ・シープラ、クリスタル・ロバーツ、サン・カーン、クラレット・ガルシア、ネリー・ハーネンデス、レスリー・キャッスル、アンジェリタ・ゴンザレス。写真:Ken Etzel 】

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地理の勉強

by リサ・リチャードソン

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ある年のクリスマスに弟が『死ぬまでに見たい場所1000選』という本をくれた。私はこの手の本が大嫌いだ。弟と彼のガールフレンドはリストにチェックマークをつけるかのように、行ったことのある場所を得意げに並べたが、私は理解に苦しんだ。「で、そこでいったい何をしたわけ?」

目的地に着き、見物し、「済」印をつけて終わりという旅行。あとになって思い出すことさえない旅行。批判的なとげとげしい感情に包まれて、せっかくの休み気分が損なわれた。私にはすべて取るに足らない、空っぽの栄光に思えた。私にもリストがないわけではない。でもその「規定」のようなものがあるとほのめかすのは、幸せにたどり着くためのルートが GPS で検索可能であると約束する、巧妙な詐欺のように思える。

かつて誰かが「あいつは自分の領域すらわかっていない」とバカにするのを耳にしたことがある。その軽蔑的なひとことは妙に頭に引っかかり、自分は絶対にそんな風に言われたくないと思った。そして、本当にそうだ。そもそも自身の恐怖と向き合ったことすらないのに、携帯電話で自撮りして目的達成の証拠にしたり、縁もゆかりもない 100 人の後ろに並んで皆と同じことをしたりするのに、何の意味があるのだろう。

【 リア・エヴァンスが渡るのは、 シーズン末のリンゲン・アルプスで液体と 化した雪原。ノルウェー。全写真:Garrett Glove 】

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カスケードのリズム

by コリン・ワイズマン

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「ただ地元にとどまってウインドリップに乗りたいだけなんだ」とジョシュ・ダークセンは言った。それはシンプルな主張であり、シンプルな目標だった。

2014 年 4 月、僕たちはオレゴン中央部のサウス・シスターで数日間キャンプしていた。キャンプ地となる山の中腹にたどり着くのには時間がかかったが、神経がすり減るような場面はなかった。ハイウェイ372 号線から整備された雪道を、スノーモービルではなくファットバイクで 16 キロ進むという目新しい手段を使ってアプローチし、そこからスプリットボードでハイクアップした。そして南側の山腹にある春の深い雪塊を掘ってベースキャンプを設営した。

豪雨でできた深い溝を避け、周辺を探索しながら 3 夜を過ごした。ダークセンはシーズンのはじめに見た積雪層との変化に注目していた。僕たちが滑ったのはほんの一部だけだったが、滑降に適した峡谷をいくつか見つけた。

【 自分の裏庭にマウント・マクラフリンのような予期せぬ秘宝が隠されているのなら、冬中オレゴンにとどまるのはちっとも悪くない。写真:TYLER ROEMER 】

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ジャンボ・ワイルド:聖域と野生地

by ロビン・ダンカン

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ジャンボ・バレーのパーセル山脈のパウダーの秘められた奥地には、ちっぽけなコンクリートのスラブがあります。放棄されたジャンボ・グレーシャー・リゾートの基礎です。それは環境認可書が無効になる前にグレーシャー・リゾートが公式にスキー場の建築に着手しようとした最後の試みの名残りです。

地元民が25年間戦いつづけているジャンボ・グレーシャー・リゾート計画はまったく意味をなさないものです。ブリティッシュ・コロンビアにもう一つ別のスキー場は必要なく、しかも野生のパーセル山脈のど真ん中に、またすでにすべての街に独自のスキー場がある地域ではなおさらです。私たちに必要なのは野生地であり、クトゥーナーハ族の神聖な価値への尊敬の念とグリズリーベアが自由に歩き回ることのできる場所なのです。

【 「いつかジャンボ・バレーのような野生地を私の子供たちに見せたいです。彼らが自分の内に野生地を培い、私たちに委ねられた世界を気遣ってくれるように」—リア・エバンス。ブリティッシュ・コロンビアのパーセル山脈ジャンボ峠にて。写真:Garrett Grove 】

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ある日のクライム&ライド

by 旭 立太(スノーボーダー/ガイド)

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山の楽しみ方は色々ある。クライム&ライド。私がこの遊びをはじめたのはここ数年のことだ。

以前の私はというと「なるべく快適にアプローチし、よい斜面を滑りたい」、つまりは「滑るために山へ行く」というのがおもな目的だった。リフトで標高の高いエリアまで行き、小一時間ほどのハイクをしたら、それ以上の充足感を得られる滑りをしたい……。いまでもそのようなお得感のあるバックカントリーライディングは好きだが、小さな失敗を積み重ねて得た山での経験と成功、そして年齢を重ねるにつれて、近年は楽しみ方の幅が大きく広がってきた。それがさらに広がったのはスプリットボードを手に入れてからだろう。スノーボードマウンテニアリングの世界が一気に広がった。

たとえば2013年のデナリ山頂からのスノーボード滑走。スプリットボードは氷河地形での移動に非常に役立った。山頂からの滑走と言えば聞こえはよいが、20日近く氷河上で行動しても、滑るのはそのうち3時間にも満たない。何日も歩き、キャンプし、アイゼンを履いて山を登っても、滑る時間は割合としてはわずかである。しかも滑ると言っても大半が移動であり、「気持ちいい」という滑りをしたのはそのうちの15分ほどではないだろうか。とても効率的とは言えない。滑るためというより、滑りを交えた山行だった。1つの山行、あるいは1つの旅のなかに、滑りが1シーンでもあればそれでいい。山で過ごす色々な時間を、色々な形で楽しめるようになったのだと思う。

【 全写真:松尾憲二郎/アフロスポーツ

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山と人を撮る

by 松岡祥子(山岳スキーフォトグラファー)

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山岳滑降が好きです。とりわけ緊張感や達成感を得ながら濃密な時間を過ごすことのできる、北アルプスの急斜面やレアルートの、しかも広い斜面より狭いルンゼが。なぜなら山に抱かれている気がするから。山岳滑降のいいところは、遠くからでも滑ったルートが分かることです。たとえば白馬三山(白馬村に入った途端目に入る白い三つの頂、厳冬期に鋭く尖って白く輝く尾根、それらが集まって出来るピーク)は山頂から滑ることができ、かつそのルートを麓から見ることができます。見るたびに滑ったときの感動を反芻できるので、それを味わうために何度も北アルプスに足を運んでしまう人も多いのではないでしょうか。そこを滑ったときの熱い情熱は、年を取ったとしてもその山を見るたびに思い出すはずです。

【 八方より白馬三山。 全写真:松岡祥子 】

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変わらないジャンボ

by アレックス・ヨーダー

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迷った感覚。救援からはるか遠くの場所にいる感覚。店からもモーターエンジンからも人間からもはなれたところに存在する感覚。僕は理解をはるかに超えた巨大な世界にいる。目に見えるものだけが存在するすべてで、まだ見ることのできない何かを発見するために生きている。1日は明と暗の2種類の時間しかなく、食事は肉体の燃料であり、舌のダンスのためのものではない。寒さは身を裂き、太陽は叱る。それは近代技術が必須でないものや便利なものを紹介しはじめる前がどんな暮らしだったかをうかがわせる。

その一方で、いまは2015年。僕は自分の居場所を知らせる機器を持つ。不慮の事故が起きれば僕の声を宇宙の衛星に反射させて救助を求めることのできる携帯電話を持っている。それでも僕の心にはすべての快適さと非常用装置を抹消させるだけのロマンスが存在する。心のなかでは、僕は自由で野生で迷うただの動物だ。

写真(上):ジャンボ峠付近のアレックス・ヨーダー。カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州 写真:Steve Ogle

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ジャンボを野生のままに:ジャンボ・グレイシャーを保護するための闘い

By マイク・ベラール

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過去24 年間、カナダのブリティッシュ・コロンビア州クートニーの住民の大半が、パーセル山脈中央部の奥地に通年営業の巨大スキーリゾートを建設するという計画に反対してきた。この地方は貴重な手つかずのアルパインバックカントリーと、グリズリーベアの重要な生息地の中心部の両方を包含している。このストーリーを掲載するために本紙の制作が進められていたまさにそのとき、州政府はスキーリゾート計画を「実質上着工されたもの」ではないと見なすことで、開発を企んでいた業者たちに重大な一撃を与えた。この展開により、企画を押し進めるためには開発業者たちは振り出しに戻って環境アセスメントの認証を再申請しなければならない。開発業者たちが次の動きを模索するなか、それを断固食い止めようと、前線を守る地元のスキーヤー、スノーボーダー、クライマー、野生生物保護活動家、ファースト・ネーションズといった人たちは、この判決によって四半世紀にわたる闘いにまもなく終焉が訪れることを願う。しかし開発業者たちが今後倍の努力を注ぎ込むにしても、反対者たちが勝利を祝うにしても、これがなんとも長く奇妙な旅だったことは事実だ。

上:ジャンボ・バレー。カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州パーセル山脈中央部 写真:Garrett Grove

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クリーネストライン

アウトドアウェアを製造/販売するパタゴニアの社員、友人そしてお客様のためのブログです。パタゴニアについては patagonia.jp をご覧ください。

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