地理の勉強

by リサ・リチャードソン

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ある年のクリスマスに弟が『死ぬまでに見たい場所1000選』という本をくれた。私はこの手の本が大嫌いだ。弟と彼のガールフレンドはリストにチェックマークをつけるかのように、行ったことのある場所を得意げに並べたが、私は理解に苦しんだ。「で、そこでいったい何をしたわけ?」

目的地に着き、見物し、「済」印をつけて終わりという旅行。あとになって思い出すことさえない旅行。批判的なとげとげしい感情に包まれて、せっかくの休み気分が損なわれた。私にはすべて取るに足らない、空っぽの栄光に思えた。私にもリストがないわけではない。でもその「規定」のようなものがあるとほのめかすのは、幸せにたどり着くためのルートが GPS で検索可能であると約束する、巧妙な詐欺のように思える。

かつて誰かが「あいつは自分の領域すらわかっていない」とバカにするのを耳にしたことがある。その軽蔑的なひとことは妙に頭に引っかかり、自分は絶対にそんな風に言われたくないと思った。そして、本当にそうだ。そもそも自身の恐怖と向き合ったことすらないのに、携帯電話で自撮りして目的達成の証拠にしたり、縁もゆかりもない 100 人の後ろに並んで皆と同じことをしたりするのに、何の意味があるのだろう。

【 リア・エヴァンスが渡るのは、 シーズン末のリンゲン・アルプスで液体と 化した雪原。ノルウェー。全写真:Garrett Glove 】

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カスケードのリズム

by コリン・ワイズマン

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「ただ地元にとどまってウインドリップに乗りたいだけなんだ」とジョシュ・ダークセンは言った。それはシンプルな主張であり、シンプルな目標だった。

2014 年 4 月、僕たちはオレゴン中央部のサウス・シスターで数日間キャンプしていた。キャンプ地となる山の中腹にたどり着くのには時間がかかったが、神経がすり減るような場面はなかった。ハイウェイ372 号線から整備された雪道を、スノーモービルではなくファットバイクで 16 キロ進むという目新しい手段を使ってアプローチし、そこからスプリットボードでハイクアップした。そして南側の山腹にある春の深い雪塊を掘ってベースキャンプを設営した。

豪雨でできた深い溝を避け、周辺を探索しながら 3 夜を過ごした。ダークセンはシーズンのはじめに見た積雪層との変化に注目していた。僕たちが滑ったのはほんの一部だけだったが、滑降に適した峡谷をいくつか見つけた。

【 自分の裏庭にマウント・マクラフリンのような予期せぬ秘宝が隠されているのなら、冬中オレゴンにとどまるのはちっとも悪くない。写真:TYLER ROEMER 】

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ジャンボ・ワイルド:聖域と野生地

by ロビン・ダンカン

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ジャンボ・バレーのパーセル山脈のパウダーの秘められた奥地には、ちっぽけなコンクリートのスラブがあります。放棄されたジャンボ・グレーシャー・リゾートの基礎です。それは環境認可書が無効になる前にグレーシャー・リゾートが公式にスキー場の建築に着手しようとした最後の試みの名残りです。

地元民が25年間戦いつづけているジャンボ・グレーシャー・リゾート計画はまったく意味をなさないものです。ブリティッシュ・コロンビアにもう一つ別のスキー場は必要なく、しかも野生のパーセル山脈のど真ん中に、またすでにすべての街に独自のスキー場がある地域ではなおさらです。私たちに必要なのは野生地であり、クトゥーナーハ族の神聖な価値への尊敬の念とグリズリーベアが自由に歩き回ることのできる場所なのです。

【 「いつかジャンボ・バレーのような野生地を私の子供たちに見せたいです。彼らが自分の内に野生地を培い、私たちに委ねられた世界を気遣ってくれるように」—リア・エバンス。ブリティッシュ・コロンビアのパーセル山脈ジャンボ峠にて。写真:Garrett Grove 】

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ある日のクライム&ライド

by 旭 立太(スノーボーダー/ガイド)

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山の楽しみ方は色々ある。クライム&ライド。私がこの遊びをはじめたのはここ数年のことだ。

以前の私はというと「なるべく快適にアプローチし、よい斜面を滑りたい」、つまりは「滑るために山へ行く」というのがおもな目的だった。リフトで標高の高いエリアまで行き、小一時間ほどのハイクをしたら、それ以上の充足感を得られる滑りをしたい……。いまでもそのようなお得感のあるバックカントリーライディングは好きだが、小さな失敗を積み重ねて得た山での経験と成功、そして年齢を重ねるにつれて、近年は楽しみ方の幅が大きく広がってきた。それがさらに広がったのはスプリットボードを手に入れてからだろう。スノーボードマウンテニアリングの世界が一気に広がった。

たとえば2013年のデナリ山頂からのスノーボード滑走。スプリットボードは氷河地形での移動に非常に役立った。山頂からの滑走と言えば聞こえはよいが、20日近く氷河上で行動しても、滑るのはそのうち3時間にも満たない。何日も歩き、キャンプし、アイゼンを履いて山を登っても、滑る時間は割合としてはわずかである。しかも滑ると言っても大半が移動であり、「気持ちいい」という滑りをしたのはそのうちの15分ほどではないだろうか。とても効率的とは言えない。滑るためというより、滑りを交えた山行だった。1つの山行、あるいは1つの旅のなかに、滑りが1シーンでもあればそれでいい。山で過ごす色々な時間を、色々な形で楽しめるようになったのだと思う。

【 全写真:松尾憲二郎/アフロスポーツ

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山と人を撮る

by 松岡祥子(山岳スキーフォトグラファー)

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山岳滑降が好きです。とりわけ緊張感や達成感を得ながら濃密な時間を過ごすことのできる、北アルプスの急斜面やレアルートの、しかも広い斜面より狭いルンゼが。なぜなら山に抱かれている気がするから。山岳滑降のいいところは、遠くからでも滑ったルートが分かることです。たとえば白馬三山(白馬村に入った途端目に入る白い三つの頂、厳冬期に鋭く尖って白く輝く尾根、それらが集まって出来るピーク)は山頂から滑ることができ、かつそのルートを麓から見ることができます。見るたびに滑ったときの感動を反芻できるので、それを味わうために何度も北アルプスに足を運んでしまう人も多いのではないでしょうか。そこを滑ったときの熱い情熱は、年を取ったとしてもその山を見るたびに思い出すはずです。

【 八方より白馬三山。 全写真:松岡祥子 】

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変わらないジャンボ

by アレックス・ヨーダー

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迷った感覚。救援からはるか遠くの場所にいる感覚。店からもモーターエンジンからも人間からもはなれたところに存在する感覚。僕は理解をはるかに超えた巨大な世界にいる。目に見えるものだけが存在するすべてで、まだ見ることのできない何かを発見するために生きている。1日は明と暗の2種類の時間しかなく、食事は肉体の燃料であり、舌のダンスのためのものではない。寒さは身を裂き、太陽は叱る。それは近代技術が必須でないものや便利なものを紹介しはじめる前がどんな暮らしだったかをうかがわせる。

その一方で、いまは2015年。僕は自分の居場所を知らせる機器を持つ。不慮の事故が起きれば僕の声を宇宙の衛星に反射させて救助を求めることのできる携帯電話を持っている。それでも僕の心にはすべての快適さと非常用装置を抹消させるだけのロマンスが存在する。心のなかでは、僕は自由で野生で迷うただの動物だ。

写真(上):ジャンボ峠付近のアレックス・ヨーダー。カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州 写真:Steve Ogle

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ジャンボを野生のままに:ジャンボ・グレイシャーを保護するための闘い

By マイク・ベラール

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過去24 年間、カナダのブリティッシュ・コロンビア州クートニーの住民の大半が、パーセル山脈中央部の奥地に通年営業の巨大スキーリゾートを建設するという計画に反対してきた。この地方は貴重な手つかずのアルパインバックカントリーと、グリズリーベアの重要な生息地の中心部の両方を包含している。このストーリーを掲載するために本紙の制作が進められていたまさにそのとき、州政府はスキーリゾート計画を「実質上着工されたもの」ではないと見なすことで、開発を企んでいた業者たちに重大な一撃を与えた。この展開により、企画を押し進めるためには開発業者たちは振り出しに戻って環境アセスメントの認証を再申請しなければならない。開発業者たちが次の動きを模索するなか、それを断固食い止めようと、前線を守る地元のスキーヤー、スノーボーダー、クライマー、野生生物保護活動家、ファースト・ネーションズといった人たちは、この判決によって四半世紀にわたる闘いにまもなく終焉が訪れることを願う。しかし開発業者たちが今後倍の努力を注ぎ込むにしても、反対者たちが勝利を祝うにしても、これがなんとも長く奇妙な旅だったことは事実だ。

上:ジャンボ・バレー。カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州パーセル山脈中央部 写真:Garrett Grove

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地面を歩く:「ジャンボ・ワイルド」の2人のスキーヤーが野生の場所、コミュニティ、そしてアクティビズムについて語ります。

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ブリティッシュ・コロンビア州南東部に暮らすジャスミン・ケイトンリア・エバンス。ケイトンはスキーガイド兼ヴァルハラ・マウンテン・ツアリングの共同経営者、そしてエバンスはレベルストークにあるフリースタイルスキー・プログラム「ガールズ・ドゥ・スキー」の創設者兼ディレクターとして働いています。ケイトンは子供のころからバックカントリースキーに親しみ、エバンスはフリースタイルスキー競技にハードに打ち込んできたという経歴の持ち主です。近年激しい論争が繰り広げられ、スウィート・グラス・プロダクションの新作映画『ジャンボ・ワイルド』にフィーチャーされたジャンボ・グレイシャー・リゾート開発案の建設予定地をみずからの目で見るために訪れた、ジャンボ・グレイシャーのバックカントリーでの8日間のスキートラバースを終えたばかりの2人に話を聞きました。

写真上:登高に備えて荷造りするリアとジャスミン。カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州セルカーク山脈。写真:Garrett Grove

 

この旅以前には一緒にスキーをしたことはなかったそうですが、2人の相性はどうでしたか?

ジャスミン:知らない人との旅は「うーん…」という感じのこともあるんですが、今回は間違いなく大正解でした。リアと一緒にいるとよりエキサイティングなことに挑戦したくなるんです。私たちのスキルは互いを補うのにぴったりで、多くを分かちあうことができました。

リア:そうなんです。ジャスミンはバックカントリーの経験が豊富だから、私は彼女のやることすべてをしっかりと見ていました。バックパックにしても、ジャスミンがこうしているから私も同じようにしよう……とか。彼女からできるだけたくさんのことを学びたいです。

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ジャンボ・ワイルド:「我ら人民」

 by エリエル・ヒンダート

  

注意して見ていなければ見過ごしてしまうものがある。

朝日のなかでコロンビア・リバー流域からパーセル山脈を見渡していると、ラジウム・ホットスプリングスにある地方自治体事務所を通り過ぎてしまう。それは人間の存在がたんなる星印のように思えるこの限りない自然の世界ではむずかしいことではない。

編集者記:街頭デモからオンライン嘆願書への署名までアクティビズムにはさまざまな形態があります。私たちにできる最も重要で効果的なもののひとつは公聴会での発言です。今回の投稿はブリティッシュ・コロンビアに提案されているジャンボ・グレイシャー・リゾートについての今年はじめの公聴会からのもので、ジャンボ・バレーをめぐる25年の闘いのたったひとつのエピソードです。私たちはこのストーリーを、スウィートグラス・プロダクションとパタゴニアによる長編映画『Jumbo Wild』の発表にともないお届けします。映画のリリースとともにパタゴニアは地元の環境保護団体〈ワイルドサイト〉と密に協力し、ジャンボ・バレーの開発の阻止と永久保護に取り組みます。映画のツアー日程、予告編、ジャンボを野生のままに保つための行動についてはPatagonia.com/japanでご覧ください。

その建物は引き返すとやっと見つかる。オフホワイトで、小さな看板があり、公共施設というよりは住居のようだ。ここが最近できたジャンボ・ワイルド・マウンテン・リゾート自治体のための一般の意見聴取の足場。公衆が存在しない地域における公聴会のようなもので、提案されているジャンボ・マウンテン・リゾートの方向について懸念を抱く人びとが情報や意見を表明するのに5分が与えられる。

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四度目の大平山

by 狩野恭一 (パタゴニア・スキー・アンバサダー)

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これで四度目の大平山の旅がはじまった。何度目かの長く暗いトンネル歩きも、はじめて持ち込んだブレオのスケートボードのおかげで、通過するのがいまから楽しみで仕方がない。だが今回はベースを設けてじっくりと向き合う計画なので、その分快適性を追求しすぎた大量の荷物運びに苦労している。メンバーは、ここ4年ほど一緒に行動しているパタゴニア日本支社勤務でスプリットボーダーの島田和彦利尻戸隠と厳しい山行に同行してきたアフロスポーツ所属カメラマンの松尾憲二郎、一緒に北海道バックカントリーガイズでガイドとして働いているスキーヤーの塩崎裕一、昨年の戸隠にも参加したスキーヤーの中島力と僕の5人。まだ山は見えてはこないが、天気も良くなる方に向かっているみたいだ。そして結果からいうと今回、僕は十分満足できる良いラインを残すことができた。

【 ダイレクトに尾根を目指して稜線上の岩に取り付く島田と狩野。島田がリードに変わった直後の、3日間で最高の天気のもとでのこの核心部の登りは、左に日本 海、南に太平洋を望むという北海道南西部ならではのパートだった。滑るラインの全貌も見え、気持ちは否応なしに高揚する。全写真:松尾憲二郎/アフロスポーツ 】

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クリーネストライン

アウトドアウェアを製造/販売するパタゴニアの社員、友人そしてお客様のためのブログです。パタゴニアについては patagonia.jp をご覧ください。

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