変わらないジャンボ

by アレックス・ヨーダー

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迷った感覚。救援からはるか遠くの場所にいる感覚。店からもモーターエンジンからも人間からもはなれたところに存在する感覚。僕は理解をはるかに超えた巨大な世界にいる。目に見えるものだけが存在するすべてで、まだ見ることのできない何かを発見するために生きている。1日は明と暗の2種類の時間しかなく、食事は肉体の燃料であり、舌のダンスのためのものではない。寒さは身を裂き、太陽は叱る。それは近代技術が必須でないものや便利なものを紹介しはじめる前がどんな暮らしだったかをうかがわせる。

その一方で、いまは2015年。僕は自分の居場所を知らせる機器を持つ。不慮の事故が起きれば僕の声を宇宙の衛星に反射させて救助を求めることのできる携帯電話を持っている。それでも僕の心にはすべての快適さと非常用装置を抹消させるだけのロマンスが存在する。心のなかでは、僕は自由で野生で迷うただの動物だ。

写真(上):ジャンボ峠付近のアレックス・ヨーダー。カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州 写真:Steve Ogle

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ジャンボを野生のままに:ジャンボ・グレイシャーを保護するための闘い

By マイク・ベラール

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過去24 年間、カナダのブリティッシュ・コロンビア州クートニーの住民の大半が、パーセル山脈中央部の奥地に通年営業の巨大スキーリゾートを建設するという計画に反対してきた。この地方は貴重な手つかずのアルパインバックカントリーと、グリズリーベアの重要な生息地の中心部の両方を包含している。このストーリーを掲載するために本紙の制作が進められていたまさにそのとき、州政府はスキーリゾート計画を「実質上着工されたもの」ではないと見なすことで、開発を企んでいた業者たちに重大な一撃を与えた。この展開により、企画を押し進めるためには開発業者たちは振り出しに戻って環境アセスメントの認証を再申請しなければならない。開発業者たちが次の動きを模索するなか、それを断固食い止めようと、前線を守る地元のスキーヤー、スノーボーダー、クライマー、野生生物保護活動家、ファースト・ネーションズといった人たちは、この判決によって四半世紀にわたる闘いにまもなく終焉が訪れることを願う。しかし開発業者たちが今後倍の努力を注ぎ込むにしても、反対者たちが勝利を祝うにしても、これがなんとも長く奇妙な旅だったことは事実だ。

上:ジャンボ・バレー。カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州パーセル山脈中央部 写真:Garrett Grove

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地面を歩く:「ジャンボ・ワイルド」の2人のスキーヤーが野生の場所、コミュニティ、そしてアクティビズムについて語ります。

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ブリティッシュ・コロンビア州南東部に暮らすジャスミン・ケイトンリア・エバンス。ケイトンはスキーガイド兼ヴァルハラ・マウンテン・ツアリングの共同経営者、そしてエバンスはレベルストークにあるフリースタイルスキー・プログラム「ガールズ・ドゥ・スキー」の創設者兼ディレクターとして働いています。ケイトンは子供のころからバックカントリースキーに親しみ、エバンスはフリースタイルスキー競技にハードに打ち込んできたという経歴の持ち主です。近年激しい論争が繰り広げられ、スウィート・グラス・プロダクションの新作映画『ジャンボ・ワイルド』にフィーチャーされたジャンボ・グレイシャー・リゾート開発案の建設予定地をみずからの目で見るために訪れた、ジャンボ・グレイシャーのバックカントリーでの8日間のスキートラバースを終えたばかりの2人に話を聞きました。

写真上:登高に備えて荷造りするリアとジャスミン。カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州セルカーク山脈。写真:Garrett Grove

 

この旅以前には一緒にスキーをしたことはなかったそうですが、2人の相性はどうでしたか?

ジャスミン:知らない人との旅は「うーん…」という感じのこともあるんですが、今回は間違いなく大正解でした。リアと一緒にいるとよりエキサイティングなことに挑戦したくなるんです。私たちのスキルは互いを補うのにぴったりで、多くを分かちあうことができました。

リア:そうなんです。ジャスミンはバックカントリーの経験が豊富だから、私は彼女のやることすべてをしっかりと見ていました。バックパックにしても、ジャスミンがこうしているから私も同じようにしよう……とか。彼女からできるだけたくさんのことを学びたいです。

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ジャンボ・ワイルド:「我ら人民」

 by エリエル・ヒンダート

  

注意して見ていなければ見過ごしてしまうものがある。

朝日のなかでコロンビア・リバー流域からパーセル山脈を見渡していると、ラジウム・ホットスプリングスにある地方自治体事務所を通り過ぎてしまう。それは人間の存在がたんなる星印のように思えるこの限りない自然の世界ではむずかしいことではない。

編集者記:街頭デモからオンライン嘆願書への署名までアクティビズムにはさまざまな形態があります。私たちにできる最も重要で効果的なもののひとつは公聴会での発言です。今回の投稿はブリティッシュ・コロンビアに提案されているジャンボ・グレイシャー・リゾートについての今年はじめの公聴会からのもので、ジャンボ・バレーをめぐる25年の闘いのたったひとつのエピソードです。私たちはこのストーリーを、スウィートグラス・プロダクションとパタゴニアによる長編映画『Jumbo Wild』の発表にともないお届けします。映画のリリースとともにパタゴニアは地元の環境保護団体〈ワイルドサイト〉と密に協力し、ジャンボ・バレーの開発の阻止と永久保護に取り組みます。映画のツアー日程、予告編、ジャンボを野生のままに保つための行動についてはPatagonia.com/japanでご覧ください。

その建物は引き返すとやっと見つかる。オフホワイトで、小さな看板があり、公共施設というよりは住居のようだ。ここが最近できたジャンボ・ワイルド・マウンテン・リゾート自治体のための一般の意見聴取の足場。公衆が存在しない地域における公聴会のようなもので、提案されているジャンボ・マウンテン・リゾートの方向について懸念を抱く人びとが情報や意見を表明するのに5分が与えられる。

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四度目の大平山

by 狩野恭一 (パタゴニア・スキー・アンバサダー)

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これで四度目の大平山の旅がはじまった。何度目かの長く暗いトンネル歩きも、はじめて持ち込んだブレオのスケートボードのおかげで、通過するのがいまから楽しみで仕方がない。だが今回はベースを設けてじっくりと向き合う計画なので、その分快適性を追求しすぎた大量の荷物運びに苦労している。メンバーは、ここ4年ほど一緒に行動しているパタゴニア日本支社勤務でスプリットボーダーの島田和彦利尻戸隠と厳しい山行に同行してきたアフロスポーツ所属カメラマンの松尾憲二郎、一緒に北海道バックカントリーガイズでガイドとして働いているスキーヤーの塩崎裕一、昨年の戸隠にも参加したスキーヤーの中島力と僕の5人。まだ山は見えてはこないが、天気も良くなる方に向かっているみたいだ。そして結果からいうと今回、僕は十分満足できる良いラインを残すことができた。

【 ダイレクトに尾根を目指して稜線上の岩に取り付く島田と狩野。島田がリードに変わった直後の、3日間で最高の天気のもとでのこの核心部の登りは、左に日本 海、南に太平洋を望むという北海道南西部ならではのパートだった。滑るラインの全貌も見え、気持ちは否応なしに高揚する。全写真:松尾憲二郎/アフロスポーツ 】

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2度目のダークセンダービー:いまやっていることと、これからやりたいこと

by 辰己 博実(パタゴニア・チェアスノーボード・アンバサダー)

バチュラー

昨年12月、前年に引き続き2度目の参加となるダークセンダービーに出場するためにアメリカ、オレゴン州マウント・バチェラーを訪れた。滑走日数が一番多いホームゲレンデのニセコの次に、二番目に多いのがバチェラーで、第二のホームだ。外に出ることによって得ることは多く、言葉の壁を感じることも少なくはないが、それでもこの町で過ごす数日は僕にとって特別な時間となっている。結果から言うと、今年も優勝出来ず2位だったがまた来年の課題にしようと思う。

ここ数年、アメリカのアンバサダーたちがよく日本に滑りに来ているから顔を合わす機会も多い。アレックス・ヨーダーはGENTEMSTICKのチームライダーだし、みなGENTEMSTICKに興味を持っている。ダービーにはジェリー・ロペスやペップ・ファスなどのスノーボード以外のアンバサダーも来ていて、ほかにも多くのローカルたちと同じ土俵で滑れるのがこの大会の醍醐味だ。今回は昨年動いてなかったトップリフトが動いていて、ヨーダーとジェリーさんの案内で一緒に滑ることができた。雪も少し降って快晴、一緒にリフトに乗ったローカルのおじさんが「今日は今シーズンで最高の日だ」って言っていたし、景色も素晴らしい。バチェラーは大きな山でリフト一本分の滑走距離が長く、地形も豊富で最高のロケーション。スノーアンバサダーたちが一同に会し、一緒に滑る機会はここでしかないし、当然ながら皆うまくて滑りながら自然と笑みがこぼれる。昨年来たことを覚えていてくれた人たちも多く、去年よりも誰かしら近くにいてワイワイ楽しくやれた。また今年新たに知り合った人たちも多く、皆が興味を持って話しかけてくれる。英語はあまりできないが、コミュニケーションは取れるし、みんなが「スゲーな」って言ってくれるのは単純にうれしい。日本よりもダイレクトな反応はとても刺激になるし、もっとやってやろうとモチベーションも上がる。

[ 2度目のマウント・バチェラー 写真:辰己 博実 ]

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デーブ・ローゼンバーガー 1976-2015

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今日は悲しいお知らせがあります。パタゴニア・スキー・アンバサダーで、「アメリカン・デーブ」として知られていたデーブ・ローゼンバーガーが、1月23日金曜日、モンブラン山地のイタリア側をスキーで滑走中、雪崩に遭い、亡くなりました。デーブがパタゴニア・ファミリーの一員になったのは2010年でした。私たちはデーブの家族と友人たちに心よりお悔やみを申し上げます。彼は多くの人にとってのインスピレーションでした。彼を失ったことで世界中が失望することとなるでしょう。

以下はパタゴニアのグローバル・アウトドア・マーケティング・ディレクターであるジョシュ・ニールセンの追悼のコメントです。

「彼は純粋な情熱をもったスキーヤーの見本のような人でした。彼はカメラで撮影されたり人に注目されたりするためにスキーをしていたのではなく、正しい動機のもとスキーというスポーツに全力を傾けていました。デーブは予測したうえでのリスクを負う人であり、才能あるアスリートでした。そして冬はとくにシャモニをホームにし、世界でももっともチャレンジングなラインでのクライミングとスキーに人生を捧げていました。デーブはそのリラックスした滑走スタイルとは裏腹に、情熱的な性格の持ち主でもありました。彼はパタゴニア・ファミリーに対して多大な貢献をしてくれました。製品デザインを見極める才能があった彼は、明確で、貴重な製品テスターでした。彼はまたアンバサダー仲間たちからも愛され、シャモニのパウダーを愛する冒険者たちの友人であり、媒介者でもありました。思いやりに満ちたデーブのことがとても深く惜しまれます」

【 モンブラン北壁の下に立ち、シャモニ渓谷を眺めるデービッド・ローゼンバーガー。フランス、シャモニ。写真:Christian Pondella 】

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八ヶ岳:横岳東面・北沢ルンゼ

by 島田和彦 『DIGGIN’ MAGAZINE ISSUE04』より転載

八ヶ岳

危うくそのまま滑り降りてしまうくらい忽然と、最後の砦である大滝がその姿を現した。60mのロープがギリギリ20cmほど雪面に届くという宝の場所を探し当て、登り返すという最悪の選択肢は、ようやく消えていった。先ほどからうろついていた熊の親子が、僕らの帰る方向へと走り去っていく。帰路へとつづく安全地帯でいつもどおり最後尾に陣取り、スキーヤーにどうにかして追いつこうと努力するわけでもなく、スプリットボードをただひとり、心ゆくまで堪能している。12時間の山行をスキーヤーについていくのは中々骨が折れることだが、道具をスキーに戻そうとは思わない。まだマイノリティであることを楽しんでいたい。

札幌に住んでいたころは、世界は北海道だけで十分だった。しかし本州に住むようになってからは、ある意味吹っ切れた感じで、雪を求めてどこへでも行く気になった。いまは日本地図を広げては「ここは、どうかな?」と課題を練る範囲が広がったとポジティブに捉えている。

こうした課題に首都圏での生活と仕事とともに取り組んでいくには、それなりの条件が必要になる。滑りの筋肉は必要不可欠だから、シーズンはじめには、ゲレンデを嫌というほど滑り倒す。それができるのも限られているから、行ったからにはこれでもかというくらい乳酸が溜り、12ラウンド戦ったあとのボクサーのようになったら帰ろうと思う。山登りに行けないのなら、ザックをパンパンにして自宅で踏み台昇降を1時間は粘ってみようか。心肺機能のトレーニングのために、ランニングの優先順位も高い。ストレッチは苦手だが、怪我防止や血行のためには仕方がない。岩場でのロープワークやクライミングジムで汗を流すのも然り……。こんなふうに人生で2度とこない冬のために準備をしている。もちろん、パタゴニアでの仕事と両立させながら。

【YOKODAKE PEAK VIEW  写真:KENJIRO MATSUO】

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リズ・デイリー(1985~2014)

by ジョシュ・ニールセン、キャロライン・グライク、アレックス・ヨーダー、フォレスト・シアラー(文)、ギャレット・グローブ(写真)

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先週のはじめ、元パタゴニアのスノー・アンバサダーのリズ・デイリーが、アルゼンチンのフィッツロイ山群で起きた雪崩事故で月曜日に遭難死したという悲劇的なニュースを受け取りました。リズの家族とお友達の皆様へ心からお悔やみ申し上げます。

リズは彼女と時間を過ごしたことのある人なら誰にも忘れられない笑顔と笑いで印象を残した、温かく外交的で素晴らしい人でした。パタゴニアではリズはスノー製品チームと密に働き、刺激的なデザインとギアのテスト、そして現在のウィメンズ製品のラインを洗練させるのに一役買ってくれました。真に情熱的で高い技術をもつリズは、スノーボーディングとクライミングの両方に卓越した稀な人材で、世界中で多くの冒険をこなし、パタゴニアはそれをいつも楽しくシェアしていました。

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Mt Clemenceau North Face REVISIT:マウント・クレマンソー北壁再訪

by 加藤直之岳人9月号』 ヴァリエーションリポート「人力で挑むカナディアン・ロッキー孤高の名峰:マウント・クレマンソー北壁、登攀・滑降の軌跡」』より抜粋

25滑りこむ準備をする加藤 photo by 山木

日程:2014年4月28日~5月19日
メンバー:加藤直之(41)、廣田勇介(36)、山木匡浩(39)

われわれの遠征の目的は、昨年ジャスパー側のサンワプタフォールズから往復100キロをアプローチした結果、かすり傷ひとつ残せなかったクレマンソー北壁の登攀・滑降の再挑戦だ。今年は西のキンバスケット・レイクからカヤックを用いアプローチし、樹林帯から氷河を抜け、北壁基部へ回りこむ計画を実行した。表面的な結果よりプロセスを重んじるぼくらは、この美しすぎる北壁と1989年厳冬期に初登攀した先人の偉業に最大の敬意を表し、限られた情報の中でサポートなしのチーム・オンサイトトライにこだわった。

【 北壁を滑りこむ準備をする加藤。全写真:山木匡浩 】

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クリーネストライン

アウトドアウェアを製造/販売するパタゴニアの社員、友人そしてお客様のためのブログです。パタゴニアについては patagonia.com/japan をご覧ください。

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