保たれた野生

by ダン・オブライエン

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50年間にわたり、寝ても覚めても、私の頭のなかには絶えずハヤブサやワシやタカがいた。私は彼らのそばで暮らす幸運に恵まれた。私はそのツメの力強さと拳のうえに停まる彼らの意外な重さを知っている。私はその羽の完全な複雑さを学び、甘く汚れのない息を嗅いできた。

アウトドアで多くの時間を過ごした人なら誰でも彼らには馴染みがあるだろう。小道を横切る黒いひとすじ、無限の空で舞う一点、脅かしてしまったカモの背後に広がる翼……。もしかしたら、車窓越しにフェンスの支柱のうえで凍りついた冷たい瞳と目を合わせた一瞬を経験したことがあるかもしれない。あとになってからではその色のパターンや体形を思い出せず、その目がアカケアシノスリか、オオタカか、コチョウゲンポウのものだったかを知るのもむずかしい。ガイド本は頼りにならない。だが猛禽類であったことだけは分かる。それは感じることができるからだ。

【2歳のハヤブサのギャビン。オーハイ・ラプター・センター、カリフォルニア州オーハイ。写真:Tim Davis】

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ミック・ファウラーさんと共に過ごした時間

by 花谷泰広 (パタゴニア・アルパインクライミング・アンバサダー)

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ミック・ファウラーさんを知らないアルパインクライマーはいないだろう。しかし世間的に有名人という訳ではないので、今回の初来日では、その名前をはじめて聞いた人が多いかもしれない。それは素晴らしい登攀の数々をひけらかすことはない、ミックさんの謙虚な姿勢も影響していると思う。彼の足跡は凄まじい。ほんの一部だけ紹介すると、スパンティーク(パキスタン、7027メートル)北西壁ゴールデンピラー初登攀(1987年)、セロ・キシュトワール(インド)北西壁初登攀(1993年)、四姑娘山(中国、6250メートル)北西壁初登攀(2002年)、近年ではシヴァ峰の舳(インド、6142メートル)北東稜初登攀(2012年)など。多くのクライマーを魅了し、刺激してやまない。僕もそんなクライマーのひとりである。一方で彼は税務官というフルタイムの仕事をもち、なおかつふたりの子供(22歳の娘さんと、もうすぐ20歳になる息子さん)の父親でもある。また、世界でいちばん歴史がある山岳会で、過去にはクリス・ボニントン氏やダグ・スコット氏といった伝説的な登山家が会長を務めたこともある、英国山岳会の前会長でもある。彼の登山は、いくつかの山岳団体からの助成金と彼をサポートするバーグハウス社からの金銭的支援、そしてそれ以外は自己負担で行っている。いわばアマチュアの登山家だ。

【懸垂下降で取り付きに戻ってきたばかりの僕とミックさん。小豆島にて】

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帰還:パダゴニアでの独立記念日

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2014年1月14日。未来のパダゴニア国立公園、チャカブコ・バレーの真ん中に百人を越える人びとが集まっている。巣から落ちたあと救出され、チリのサンチアゴにある〈Raptor Rehabilitation Center〉でリハビリを受けた3羽の若いアンデスコンドルが囲いのなかから広い渓谷に出て、生まれてはじめて自由に飛ぶ瞬間を待っているのだ。

コンドルは地球上でもっとも大きい鳥類の一種で、3メートルを越える翼長は猛禽類でも最長、体重は15キロにもおよび、風の助けを借りて1日に240キロも飛行する。腐食性動物であり、グアナコ、羊、その他の大きな哺乳動物の死骸を探してまわる。コンドルは長寿で、繁殖の速度が遅く、そして絶滅の危機に瀕している(牧場経営者の多くがコンドルは家畜を盗むと誤解し、殺そうとするのだ)。よってこのような飼育下繁殖プログラムやリハビリは、コンドルの未来を守る重要な役割を果たす。

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荒川の大草原を守るために:グループインターンシップでの取り組み

by パタゴニア 東京・神田
 
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今年度、 神田ストアではインターンシッププログラムを利用してNPO法人「荒川の自然を守る会」へのサポートを実施することになりました。神田ストアは「ボイス・ユア・チョイス」を通して過去4年にわたりこの草の根団体を助成してきました。インターンシップの期間は2014年6月~2015年4月で、ストアスタッフ全員で所定の時間を共有し、有給でこの団体の活動に参加します。

今回サポートすることになったNPO法人「荒川の自然を守る会」は、荒川周辺に残された自然を21世紀に生きる子どもたちに引き継ぐ大切な財産として保全していくことを目的とし、埼玉県上尾市を中心に20年以上にわたり地道に活動をつづけてきた市民団体です。

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渇望

by ショーン・へイズ

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僕の拳に止まっている鳥は、機を見る目をもっている。

この鳥が存在するのは僕の辛抱強い自制心と、何年もかけて改善に改善を重ねた修行のせいだと思いたいが、実際、鳥はそんなことは少しも気にかけていない。彼らの脳みそにあるのは、チャンスを逃さないことと、周囲の環境を利用するために目や羽根、あるいは体形といった、自分の体の構造のすべてを統合させる回路だけ。鳥は有益な状況をひたすら待ち、そしてそれに全力をかける。

【写真すべて:Shawn Reeder】

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バンフ・マウンテン・フィルム・フェスティバル・イン・ジャパン 2014開催決定

 

世界最高のアウトドア映画祭であるバンフ・マウンテン・フィルムフェスティバル。毎年11月にカナダ・アルバータ州バンフで開催されるこの映画祭は、世界有数の山岳フェスティバルのひとつとして本年で39年目を迎えます。

登山家やアウトドア愛好者が、登山シーズンとスキーシーズンのあいだに楽しめる年中行事を探し、1976年にカナダ・アルバータ州ロッキー山脈の小さな街、バンフで開催されたのがはじまりです。1日だけの登山映画際として始まったものが、いまでは9日間にわたるバンフでのイベントに加えて、南極大陸を含めた全大陸をめぐるワールドツアーで、年間840回を超える上映回数を誇り、世界中で39万人以上のアウトドアファンを魅了しています。

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羽の軽さで、愛よりも重く【写真を追加してアップデート】

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キム・ストラウドは1年に5,000本、1日に15本かそれ以上の電話を受けます。キムは州および米国魚類野生生物局より認可を受けた施設、〈オーハイ・ラプター・センター(ORC)〉の創始者です。ORCはカリフォルニア州オーハイの丘陵にある数エーカーにまたがり、負傷したり親を失ったりした猛禽類に住処とリハビリを提供しています(キムいわく、猛禽類に限らず、やって来るどんな野生動物も受け付けるとのこと)。

1991年にサンプルメーカーとしてパタゴニアに雇われたキムが自身のプログラムを始めたのは、パタゴニアのベンチュラ本社の裏にある小さな木工場でアメリカワシミミズクの雛を育てることからでした。このスペースが足りなくなったので自宅の車庫で仕事をし、ついに2000年に現在の場所に移りました。筋金入りのボランティアによって一から建てられたこのセンターは、現在1年に800の動物を受け入れ、そのうち約550が猛禽類です。カリフォルニア州最大のフライトケージを有するセンターでもあります。

【電線で片翼を失った24歳のイヌワシのシャイタン。写真:Tim Davis】

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Get Small or Get Out :ライブスクリーンプリントグループ「Big O project」の旅

by カザマナオミ

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「Get Small or Get Out」 は去年ダンに出会い、贈られた言葉。僕の活動に共感してくれたからなのか、作品に興味をもってくれたからなのか――。とにかくその言葉に出会い、それを描き、それをプリントする旅を始めるいま、その言葉はとても親しみ深いメッセージとなった。

「Get Small」――小さくあること。 結論から言うと、もともと誰もが小さいのだと想う。

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見習い

by イヴォン・シュイナード

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パタゴニアは歴史的、文化的、環境的に重要で、さらにそれらが魅惑的で価値があると思う活動や伝統に敬意を表します。日本未発行カタログ『Birds of Prey(猛禽類)book』では、人間と人間以外の動物とのあいだの関係を観察し、私たちの生活や私たちの世界における猛禽類の重要性や意味を検証します。パタゴニアの創業者であるイヴォン・シュイナードは10代のころタカ狩りに魅了され、実際、彼は巣を調べるために崖を苦労して登ることでクライミングを見いだしました。イヴォンの人格形成期についての考察ではじまる本カタログからのエッセイは、クリーネストラインで順次ご紹介していきます。

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12歳か13歳のとき、僕は『ナショナル・ジオグラフィック』誌でフランクとジョン・クレイグヘッドが書いた猛禽類*についての記事を読んだ。それがきっかけでタカ狩りに興味をもち、同じく興味をもっていた2人の少年と一緒に小さな「南カルフォルニアタカ狩りクラブ」を発足させて、狩りのために野生のタカとハヤブサをトレーニングした。外に出て、両手でロープをたぐって巣まで降り、若い鳥を捕まえては訓練した。僕はクライミングでは誰にも引けを取らなかったし、まだポイズンオークにもアレルギーがなかったので、何度も岩場を登ったり降りたりさせられた。僕らを子供扱いしなかった2人の大人――1人はコーネル大学で鳥類学を学んだトム・ケイドで、もう1人は懸垂下降を教えてくれたクライマーのドン・プレンティス――が僕らを助けてくれた。

【巣には3羽の鳥がいるかも知れない。後で縮こまっている1羽、真ん中にいる1羽。そして前で攻撃態勢を取る1羽。捕えたいのはいちばん前にいる1羽だ。写真:YVON CHOUINARD COLLECTION】

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子供との釣りで思い出した僕の釣り

by 玉井 太朗 (パタゴニア・スノーボード・アンバサダー)

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延べ竿のフナ釣りからはじまった僕の釣り原体験は、そのはじまりから僕の釣りざまを決定づけるものだった。僕の師匠であった祖父の、無言のままに伝わってきたポリシーのようなもののひとつは、大物狙いの延竿一本釣りだった。それには魚にハンデを与えるとか、公平だとか、そんな理屈はなかったのだと思う。思い返すと、羽田沖のアナゴ釣りでも利根川のジャンボハゼでも、リールを使う釣りをした記憶がほとんどないのだ。少し大人になってルアーを使った釣りももちろん経験するようにはなったが、実は今になって気付いたのだけれど、どうも釈然としない何かがあって、結局僕の道具箱の中にはリールがほとんどなかった。
 
僕がスノーボードのために北海道へ移り住んだというのは、納得してもらえるいちばんの理由かもしれない。だが実は少しニュアンスが違う。僕は子供のころからマスが住む場所に憧れていたのだ。移住後はまず、ニセコ界隈を手当たり次第に歩きまわった。朝まずめから夕まずめまで、ほとんど毎日を河原の藪漕ぎに費やして過ごした。そして内地にいるときはなかなか踏ん切りのつかなかった、リールを使う西洋式毛針釣りを学んだ。はじめは上手く扱えず、苦労して巻いた毛鉤を木の枝やブッシュや河原の石などに散々取られながらだったが、さすがに1日12時間も釣りをしていると、フライが狙いどおりにふわりと着水するようになってくる。当然結果もついてくる。竿の長さに比べて釣針までの長さが何倍にもなる仕掛けやリールに戸惑ったが、キャスティングに慣れて遠くも近くも自在に狙えるその効率の良さに、楽しさを見出せるようになった。

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クリーネストライン

アウトドアウェアを製造/販売するパタゴニアの社員、友人そしてお客様のためのブログです。パタゴニアについては patagonia.com/japan をご覧ください。

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